日立造船がLNG対応の船舶用エンジンに参入する狙い
日立造船は液化天然ガス(LNG)燃料対応の船舶用エンジン事業に参入する。有明工場(熊本県長洲町)に試運転設備を整え、2024年度に受注を始める。25年度までに次世代燃料対応エンジンの開発、試験に数十億円を投じる方針。LNG燃料対応では後発ながら、4月に設立する舶用エンジン事業の新会社に造船首位の今治造船(愛媛県今治市)の出資を受け入れ、巻き返しを図る。
舶用エンジンの燃料は重油が主流だが、二酸化炭素(CO2)排出量の少ないLNGやメタノール、アンモニア、水素などへの転換が進む。日立造船はライセンスを受ける独MAN―ESブランドのエンジンでLNG対応を進める。
またMANは温室効果ガス(GHG)をほぼ出さずに製造されたグリーンメタノール対応エンジンの開発も進めており、日立造船は試験対応などで協力する方針だ。
造船業界ではGHGを排出しないゼロエミッション船の開発が急務となっており、エンジンメーカーも開発力強化に向けた再編が進む。日立造船は舶用エンジン事業を分社化し、新会社「日立造船マリンエンジン」に今治造船から35%の出資を受け入れる。
日立造船の舶用エンジン事業の損益は低迷しており、これまで投資余力が限られていた。今後、今治造船と組み開発・生産体制を強化し、舶用エンジン国内首位の三井E&Sホールディングス(HD)を追い上げる。
日立造船の鎌屋樹二常務は「カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)の業界動向をいち早くつかみ、ゼロエミ船建造に繋がる技術対応へ今治造船とのアライアンスを生かしたい」とする。将来はアンモニア対応エンジンの開発にも着手する意向だ。
日刊工業新聞 2023年01月20日