クランクシャフト・ハウジング来年生産終了…大同特殊鋼「型鍛造品」再編の全容
大同特殊鋼は型鍛造品事業を再編する。クランクシャフトなど自動車・建機向け熱間鍛造製品と、車軸部品のアクスルケースなどハウジング製品の生産から撤退する。2024年内にも該当製品の生産を終了する方針だ。一方、撤退で浮く設備や人員などはギアや軸受部品を含む高速精密鍛造製品に振り向け、体制を強化する。型鍛造事業の選択と集中を進め、収益体質の改善を急ぐ。(名古屋・川口拓洋)
「生産性向上などの改善活動に取り組んできたが、市場の将来性が見通せなくなった」。山下敏明取締役常務執行役員は、型鍛造品の一部生産から撤退する理由をこう話す。
クランクシャフトやアクスルケースは主にトラック向けに供給していたが、山下取締役常務は「日本国内での生産が縮小している。今後は電動自動車(EV)化も進む。市場の好転が期待できない」と説明する。
ただ、型鍛造品事業の21年度実績は総売上高の4%程度。撤退するクランクシャフトやアクスルケースなどは同1%強程度で、業績への影響は軽微とみている。不採算事業からの撤退で生じる余力を成長事業にシフトする戦略にかじを切る。
クランクシャフトは知多工場(愛知県東海市)で8000トンプレスなどを使い専用金型で必要形状に成型している。撤退に伴い同工場の設備は一部を他拠点に移設する。関連する人員は連結で150人に上るが、名古屋地区の他の生産拠点への再配置を検討する。
リソースを集中する高速精密鍛造製品は「成長分野のビジネス。競争力を強化する」(同)方針。自動車のトランスミッション(変速機)向けギアや軸受向け内外輪などに加え、EV化への対応も想定。足元では電動駆動部品「eアクスル」の鍛造部品も開発中で「具体的にはまだ言えないが、(電動車向けは)量も見込める」と期待する。
大同特殊鋼は26年度を最終年度とする次期中期経営計画の策定に取りかかる。「競争力がない部門は撤退も含めて考える」(同)と、引き続き選択と集中を推し進める考えだ。