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8500万人の人材不足補う、今年のロボティクス主要トレンドは?

8500万人の人材不足補う、今年のロボティクス主要トレンドは?

協働ロボットは労働力の需給ギャップを解消する一つのソリューションとして期待される

スイスのABBは2023年のロボティクスに関する主要トレンドを予測し公表した。世界的な労働力不足に伴いロボットを用いた自動化が継続。人工知能(AI)の発達で自律性が高まり、製造業以外の分野でも活用が進むとみる。ABBのマーク・セグーラロボティクスプレジデントは「23年は企業とその労働者が新たなレベルの生産性、効率、柔軟性に到達することを可能にするチャンスの年になる」との見解を示す。

トレンドの一つが、労働力不足を補うため世界で協働ロボットなどの需要が拡大する点だ。少子高齢化に加え、低賃金ややりがいを得られない魅力の乏しい仕事への抵抗感が続く傾向から、30年までに8500万人以上の人材不足が発生する可能性を指摘。ABBが22年に実施した調査ではサプライチェーン(供給網)の強靱(きょうじん)化などを目的に、欧米企業の7割以上がリショアリング(自国への生産回帰)を計画。3年以内にロボットを用いた自動化投資を増やすとしたデータの裏付けもある。

二つ目がAIの発達による自律化技術の高度化でロボット導入の裾野が広がることだ。現在は電機・電子や自動車領域を筆頭に製造業での活用が目立つロボットだが、ヘルスケアや医薬品、フードサービスなどの用途でも普及が進むと見込む。

最後が産業界と教育界のパートナーシップが強化され、労働者のロボットスキルに関する習得が進むことだ。ロボットの設置が一般的になれば、それらを管理し活用するための能力獲得がより一段と重要になる。そこでロボットメーカーや同ベンダー、教育機関の間で自動化を推進できる人材確保のためのパートナーシップ構築が予見される。

マーク・セグーラロボティクスプレジデントは「破壊と不確実性によって企業はこれまでと異なる考え方をすることが余儀なくされている。ロボットは不確実性に対する理想的な方法を提供し、ビジネスをより強固にする」と述べている。

国際ロボット連盟(IFR)も23年のロボット工学に関する主要トレンドを2月に公表。そこでは「エネルギー効率」「リショアリング」「ロボットの使いやすさ」「AIとデジタルオートメーション」「産業用ロボットのセカンドライフ」を挙げた。例えばエネルギー効率の観点では、エネルギーコストが企業の競争力や生産の持続性を占う重要な要素となっているため、エネルギー消費量を監視するセンサーなどがロボットソリューションの業界標準となる可能性を指摘している。

日刊工業新聞 2023年03月07日

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