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JALに補償金80億円、三菱重工が負うMSJ開発中止の代償

JALに補償金80億円、三菱重工が負うMSJ開発中止の代償

MSJ開発中止の代償は大きい

三菱重工業が小型ジェット旅客機「三菱スペースジェット(MSJ)」の開発を中止した影響が数字として具体的に見え始めてきた。日本航空(JAL)は28日、導入を予定していた航空機に関する補償金として80億円を受領し、2023年3月期に計上すると発表。航空機名は非公表だが、MSJとみられる。三菱重工はMSJの補償金を過去の会計処理で織り込み済みのため、業績には影響しないとしている。

三菱重工は2月7日にMSJの開発中止・撤退を発表。JALは15年1月にMSJ(当時は三菱リージョナルジェット〈MRJ〉)32機を購入する契約を結んでいた。補償金は1機平均で2億5000万円になる。JALは補償金を織り込み済みで、23年3月期の業績予想には影響しないという。

一方、ANAホールディングス(HD)は08年にローンチカスタマー(初号機を受領する顧客)として25機(10機はオプション)を発注していた。JAL同様、補償金を今後計上することが見込まれる。

ANAHDの芝田浩二社長はMSJの納入の遅れの影響について「他の機材を使ってしっかりカバーしてきた」とした上で、「25年度以降は代替の機材の確保が必要になってくる。次の小型機の選定作業に取りかかる時期に来ている」と指摘している。

MSJは267機受注残があった。撤退でキャンセルの補償金が今後も発生する。JALと同条件の1機2億5000万円と仮定すると、667億5000万円になる。

ただ、三菱重工の今後の業績への影響はなさそうだ。撤退を前提に、補償金を既に会計処理していたためだ。撤退表明会見で、小沢寿人最高財務責任者(CFO)は「開発中止決定で新たに発生する損失はほとんどない」と説明した。

とはいえ、過去に会計処理したことで今後の業績には影響しないが、補償金が発生することは変わらない。MSJを事業化できなかった代償は大きい。


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日刊工業新聞 2023年03月01日

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