「ロシア進出日系企業」6割が一部・全部の事業停止、背景にレピュテーションリスクも
日本貿易振興機構(ジェトロ)がまとめたロシアに進出する日系企業に対するアンケート結果によると、一部もしくは全部の事業停止を行う企業の割合は2022年8月の前回調査比11・1ポイント増の60・6%だった。ロシアのウクライナ侵攻から1年が経過し、長期化する中、ジェトロ海外調査部の浅元薫哉主幹(ロシアCIS)は「このような傾向は高まっていく可能性がある」と指摘した。
撤退済みもしくは撤退を決定した企業は同0・7ポイント減の4・0%で傾向は大きく変わらなかった。これらの企業に撤退理由を尋ねたところ、本社のロシアビジネス方針の変更が最も多く、次いで物流の停滞やレピュテーションリスク(企業の評判が落ちるリスク)が挙がった。
レピュテーションリスクについて浅元主幹は外国企業の例を挙げ「SNS(会員制交流サイト)や投資家からの指摘があり、撤退を表明する企業もある」と説明した。
足元の景況感を見てみるとは景況DIは同8ポイント増のマイナス49となったものの、3期連続のマイナスだった。製品・材料の輸入停止や販売・出荷の停止により、収益が減少していることが影響した。2カ月後の景況見通しDIもマイナス49で、情勢の長期化を不安視する声が複数あった。
今後半年から1年後の事業展開見通しでは、不明・該当せずとの回答が同7・4ポイント減の14・1%となる一方で、撤退が同4・5ポイント増の10・1%、縮小が同1・9ポイント増の37・4%となった。ウクライナ侵攻が長期化する中、判断を保留していた企業が減り、今後の方針を決定したと企業が増えたと見られる。
浅元主幹は「アセットを完全になくし、中国など第三国に入ってこられるリスクがある撤退という厳しい判断を下さざるを得なくなった」と分析した。
今回の調査は1月24―31日にロシアに進出する企業の198社を対象に実施し、99社から得た有効回答をまとめた。99社の内訳は自動車部品などの製造業が8社、商社などの非製造業が91社。