「リチウム電池分散体」で世界に攻勢、東洋インキSCHDが200億円超投資
東洋インキSCホールディングス(HD)はリチウムイオン電池(LiB)部材事業で攻勢をかける。2023年中に88億円の設備投資を行い米国と中国で車載LiB用分散体の生産体制を強化するほか、ハンガリー拠点でも3期目の能力増強に着手する。26年の売上高目標も当初の200億円超から350億円超(23年は75億円見込み)に引き上げた。電動化の進展を見据え、各地で電気自動車(EV)のサプライチェーン(供給網)構築が進む。世界展開を加速させ、旺盛な部材需要の取り込みを図る。(大川諒介)
東洋インキSCHDはLiB正極材の導電助剤に用いる導電カーボンナノチューブ(CNT)分散体を手がけ、高容量の車載電池向けで旺盛な需要があるという。26年までに日米中欧の4地域に総額200億円を超える設備投資を計画し、生産体制の構築を進める。
米国では、韓国SKオンなど現地に製造拠点を構える車載電池メーカーに供給。最近ではケンタッキー州内に拠点を新設し、25年から段階的に現地生産能力を4倍規模にする。米国市場は特に需要が強く、今後1―2年の設備投資は同国中心になる見込み。中国でも寧徳時代新能源科技(CATL)が24年量産予定の次世代LiBにCNT分散体の採用を決めたことを受け、生産体制を強化する。
東洋インキSCHDのLiB用分散体は、高導電タイプのCNTを用いることで、従来品と比べ少量で導電性能を発揮する。さらに、独自の分散技術などでCNTの分散性と導電性を向上。LiB正極の抵抗値を抑制し、正極中の活物質を増やすことでバッテリーの高容量化に貢献する。
高島悟社長は「EVや車載電池メーカーはグローバル展開しており、各地で製品供給できる点は大きな強みになる」と語る。車載電池は顧客承認を得るまでに期間を要し、今後の競争激化も予想されるビジネスだ。東洋インキSCHDは世界の需要地で競合に先行して供給体制を築く戦略で、市場優位性の確立を目指す。