脱コロナ禍…回復鮮明のデジカメ市場はレンズで勝負
デジタルカメラ市場の回復が鮮明になってきた。総出荷金額は2020年を底に上向き、22年も堅調に推移した。半導体などの部品不足は解消傾向にあり、製品供給が安定化。コロナ禍の影響が徐々に薄れて消費者の外出や撮影の機会が増えたこともカメラ需要を後押しした。各メーカーがカメラ本体以外に交換レンズを相次ぎ投入している点も寄与したようだ。各社には今後も多様な撮影シーンに応える品ぞろえが求められる。(阿部未沙子)
カメラ映像機器工業会(CIPA)がまとめた22年のデジタルカメラの総出荷額は、前年比39・3%増の6812億円。コロナ禍前の19年の出荷額を上回った。CIPA担当者は、スマートフォンで写真撮影に興味を持った消費者について「撮影をする以上は、しっかりやりたいという気持ちがある」と指摘。レンズ交換式カメラの強い引き合いの一因になっていると推測する。
カメラメーカー各社による新製品投入は盛んに行われた。富士フイルムは、22年にミラーレスデジタルカメラ「FUJIFILM X―T5」などを発売。後藤禎一社長は「製品をよいタイミングで出すことができた」と手応えを示す。
22年に「EOS R7」などを発売したキヤノンは、同年のレンズ交換式デジタルカメラの販売台数が前年を上回った。ソニーグループの十時裕樹副社長はレンズ交換式カメラ市場について「景気減速による顕著な悪影響は見られず、比較的安定して推移している」とみる。
カメラ本体だけでなく、交換レンズの販売も好調だ。CIPAによると、22年のレンズ交換式カメラ用のレンズの総出荷額は、前年比28・6%増の4377億円だった。被写体によって適するレンズは異なり、プロの写真家やハイアマチュア層が多様な写真を撮ろうとした場合、「レンズ1本だけでは、なかなか賄えない」(CIPA担当者)。このため一定のレンズ需要が見込める。
キヤノンは新製品の投入により「(交換レンズの)販売本数を伸ばした」(田中稔三副社長)。ニコンは25年度にはミラーレスカメラ向けのレンズ「Zマウント」を50本以上そろえる目標を掲げる。
23年に入ってからもケンコー・トキナー(東京都中野区)が35ミリフルサイズセンサーより小さい「APS―C」サイズ専用超望遠レンズを2月3日に発売。シグマ(川崎市麻生区)はミラーレス専用の大口径標準レンズを23日に発売予定だ。
過去を振り返っても交換レンズ需要は底堅い。22年のデジタルカメラの総出荷額は12年比53・6%減少した一方、レンズは同8・6%の減少にとどまる。CIPAは「(複数のレンズを使い分けて多様なシーンでの撮影を行う)楽しみの追求が背景にあるのではないか」と分析する。メーカー各社は消費者の要望に応える品ぞろえを保つことでカメラ市場のさらなる拡大につなげられるかが問われる。