キヤノンもニコンも…円安の恩恵を受けるカメラ事業、もう一つの追い風
為替の円安傾向を受け、カメラ事業の業績が堅調に推移するメーカーが相次いでいる。カメラ映像機器工業会(CIPA)によると1―9月のデジタルカメラの出荷額のうち日本向け以外が約90%を占めており、国内メーカーにとって円安の恩恵は大きい。足元では部材不足の状況が緩和され、製品供給体制も正常化しつつある。各社はこうした追い風に油断せず、中長期的な視点で製品力の向上に努めることが求められる。(阿部未沙子)
キヤノンの2022年1―9月期のイメージングビジネスユニットの売上高は、前年同期比18・8%増の5610億円だった。このうち、海外売上高が約9割を占める。「EOS R7」をはじめとするミラーレスカメラの投入などにより、販売台数が伸びた。
ニコンも22年4―9月期に映像事業の売上高が前年同期比28・4%増の1145億円に伸びた。徳成旨亮取締役専務執行役員は「円安効果に加え、プロ・趣味層向け中高級カメラへのシフトが進んだ」と話す。レンズ交換式デジタルカメラの販売台数は初級機種の展開を絞ったことから同約2万台減の37万台になったものの、フラッグシップ(旗艦)モデルのミラーレスカメラ「Z9」が好調。中高級機種への移行で平均単価が上昇した。
他メーカーのカメラ関連事業でも円安の効果が表れている。インスタントカメラ「インスタックス(チェキ)」などを展開する富士フイルムホールディングス(HD)は、22年4―9月期のイメージングセグメントの売上高が前年同期比23・7%増の1834億円。売上高増加分351億円のうち、204億円が為替の影響によるものだった。
ソニーグループは、デジタル一眼カメラ「α(アルファ)」シリーズなどを含むエンタテインメント・テクノロジー&サービス分野において、22年7―9月期だけで為替による増収効果が772億円に上った。
各社は堅調な販売や為替の円安を勘案し、カメラ事業における23年3月期(キヤノンは22年12月期)見通しを上方修正した。田中稔三キヤノン副社長が「部材不足の緩和による製品供給量の増加」を指摘したように、足元で調達難の解消が進みつつある点も追い風になっている。各社は好転した事業環境に慢心せずに地道な拡販を図り、中長期を見据えた製品開発も加速できるかが問われる。