オフィス複合機堅調で増収、事務機器メーカーたちが問われること
事務機器(OA)5社の2023年3月期(キヤノンは23年12月期)連結業績予想が出そろい、全社が増収となる見通しだ。部品の調達難が解消しつつあり、オフィス複合機の供給が回復して販売数量が堅調に推移する。ただ、一部の部品では影響が残る見通し。世界経済の景気減速や地政学リスクといった懸念もくすぶる。各社は在宅での印刷需要の取り込みや、ITソリューションをはじめとする新事業の育成などを加速できるかが問われる。
キヤノンは23年12月期の売上高を前期比6・3%増の4兆2870億円、当期利益を同10・7%増の2700億円とした。田中稔三副社長は「製品ポートフォリオの転換により、製品がBツーC(対消費者)からBツーB(対企業)へ大きくシフトし、景気減速の影響を受けにくい体質へ変化している」と手応えを示す。
プリンティング事業全体では前期比4・7%増の売り上げを見込む。オフィス複合機は一部で部品不足が続き、十分に供給できていなかったが、生産数量を回復させることで販売台数を伸ばす方針だ。インクジェットプリンターについては在宅需要はピークアウトしたものの、一定の需要を見込み、大容量インクモデル製品を中心に拡販する。
リコーは23年3月期の業績見通しを据え置いた。目標とする営業利益850億円の達成に向けて、22年10―12月期に物流逼迫(ひっぱく)などの影響で受注残解消に遅れが生じた分を取り戻す。A4複合機の供給不足が原因で主力のA3複合機とセット販売できなかったといい、川口俊最高財務責任者(CFO)は「23年1―3月期に在庫の削減を進め、挽回していく」と強調する。
機器や業務ソフトウエアを業種業務別に一括提供する「スクラムパッケージ」に関しては、情報通信技術(ICT)商材の不足が正常化しつつあり、23年3月期に約8万本の販売を見込む。買収したスキャナー大手のPFU(石川県かほく市)についても早期に相乗効果を生み出せるよう、販売体制の強化などを進める。
コニカミノルタは、23年3月期の業績見通しを据え置いた。23年1―3月期は複合機の新規受注が想定より鈍化する見込みだが、大幸利充社長は「通期目標は達成可能」と述べた。
一方、セイコーエプソンは、インフレによる消費の冷え込みや世界経済の減速リスクを織り込み、23年3月期の売上高と全利益項目を下方修正した。インクジェットプリンター本体の販売台数も下方修正するが、拡販を進める大容量インクタンクモデルは前期比10%増を見込む。