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SiC半導体の需要伸長取り込む、東洋炭素が黒鉛処理能力50%増

SiC半導体の需要伸長取り込む、東洋炭素が黒鉛処理能力50%増

シリコン単結晶製造装置(カットモデル)

東洋炭素が半導体分野の事業拡大に向け設備投資を積極化している。半導体分野の黒鉛製品に必要な処理工程の能力増強に着手。2021年12月期から26年12月期までの6年間で125億円の投資を計画しており、シリコン半導体のほか電気自動車(EV)向けに伸長が見込まれる炭化ケイ素(SiC)半導体の需要伸長も確実に取り込む構えだ。半導体向け製品で26年に売上高を21年比約2倍の200億円強に拡大する。(大阪・友広志保)

東洋炭素は詫間事業所(香川県三豊市)で黒鉛の純度を高める処理工程の新工場を25年に稼働する。投資額は50億円で生産能力は22年比50%高まる。同社は21年に中国と日本で計25億円を投じて生産能力を増強したばかり。生産技術センター(香川県観音寺市)でも20億円を投じて、黒鉛表面にSiC膜を被膜してガスや粉末を閉じ込めるコーティング処理炉を24年に稼働。生産能力は22年比で50%高まるが、やはり21年に約30億円を投じ、能力を従来比50%拡大したばかりだ。

相次ぎ増強投資に踏み切るのは、半導体業界からの要求が高まっているからだ。同社は耐熱、耐薬品性などに優れた等方性黒鉛が主力商品で、半導体製造装置向けに供給。「シリコン、SiC半導体向けが増強投資の対象」と喜久秀樹執行役員は説明する。第5世代通信(5G)やIoT(モノのインターネット)の普及で、中長期的にロジック半導体の需要は底堅い。またパワー半導体も「SiC半導体が年平均で20%の伸び。高耐圧で電力消費が少なく、EV化が背景にある」(喜久執行役員)という。

シリコン半導体向けでは単結晶シリコンインゴット製造時に石英るつぼを保持する部材や、シリコンウエハー上に薄膜を成長させる際の土台など、SiC半導体では単結晶SiCインゴット製造用の炉や、薄膜製膜時の土台が主な用途だ。

不純物対策として、高純度処理ではハロゲンガスの注入によって黒鉛内の金属不純物を融点の低いハロゲン化物に変えて取り除き、ppm(ppmは100万分の1)レベルに低減する。SiCコーティングでは気相成長(CVD)により成膜するが、24年稼働のSiCコーティング処理炉は設計の工夫によって、炉の稼働中に次のワークの炉外での段取りを可能とした。SiC成膜の生産効率を高めた技術も開発済みで、23年下期から供給を始める予定だ。従来工程の“カイゼン”や生産技術の開発により旺盛な需要に応える。

日刊工業新聞 2023年02月09日

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