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携帯事業で赤字、ドローン活用で試される楽天モバイルの手腕

携帯事業で赤字、ドローン活用で試される楽天モバイルの手腕

楽天モバイルは、基地局建設後に施工不良や不備がないかを確認する「竣工検査」などでドローンの活用を進める

楽天モバイルが携帯通信基地局の検査・調査業務で、飛行ロボット(ドローン)の活用を進めている。基地局建設後に施工不良や不備がないかを確認する「竣工検査」では、人が目視などで行っていた検査をドローンに代替。作業時間を3分の1に短縮した。今後は人工知能(AI)による画像解析技術の活用も検討する。基地局関連業務の自動化や効率化を加速し、作業者の安全性確保や所要時間短縮といった利点を追求する。(張谷京子)

「人が(基地局を設置しているコンクリート柱などに)上らないことで、より安全に検査を行えるようになったというのが一番のポイント」。基地局設置統括本部安全品質マネジメント部の中森啓之副部長はこう力を込める。従来、竣工検査では作業員がコンクリート柱などに上って、アンテナやボルト、ネジなどの状態を確認していた。コンクリート柱タイプの基地局の場合、検査項目は200程度に上る。

楽天モバイルは2020年4月に同検査でドローンを導入。ドローンが基地局の状態を空中撮影し、その画像・動画を用いて検査を行うようにした。コンクリート柱などに上った作業者が落下するリスクを解消したほか、従来3時間かかっていたコンクリート柱の検査時間は1時間に短縮した。

同社がドローンを活用するのは、竣工検査だけが目的ではない。基地局建設前に周囲環境を確認する「現地調査」でも、20年11月にドローンを導入。従来は高所作業車などを使って人が目視で確認していたが、ドローンが上空から基地局建設予定地を撮影。より広域に周囲環境を確認できるようになった。

基地局関連業務におけるドローンの活用により、作業者の安全性確保や所要時間短縮といった利点を追求する

今後は、基地局関連業務の効率化に向け、AIの活用も検討する。例えば、竣工検査では現在、ドローンが撮影した画像・動画を基に作業員が目視で検査項目の確認を行っている。しかし、AIの画像解析技術を活用できれば、そうした検査を自動で即時に行えるようになる。

加えて、近く始める予定の「保守点検」でも大きな効果が期待できる。保守点検は定期的に基地局の劣化状況などを調べる取り組み。AIを活用すれば、基地局の劣化時期も予測できるようになる可能性が高い。田邉誠二執行役員は、AI活用の利点について「(基地局を設置している鉄塔など)塔体自体の安全性を確認できるようになる。劣化状況、どのタイミングで(基地局を)補強しないといけないかが見えてくる」と強調する。

楽天モバイルは、移動体通信事業者(MNO)の中では最後発。つながりやすさの向上に向け、基地局の開設を急いでいる。22年9月には第4世代通信(4G)基地局の数が5万局を突破。23年中には6万局超に拡大し、人口カバー率は99%以上に到達する見通し。

一方親会社の楽天グループは、携帯通信事業で基地局の建設費用が膨らみ、赤字に苦しむ。ドローンの活用拡大やAIの導入で、いかに基地局関連業務の効率化に取り組めるか。楽天モバイルの手腕が試されている。


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日刊工業新聞 2022年12月27日

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