楽天「0円」廃止が光明に、低迷“MVNO”の反転攻勢はあるか
低迷していた仮想移動体通信事業者(MVNO)の新規回線契約数が回復しつつある。MM総研(東京都港区)によると、MVNOが提供する「独自サービス型SIMカード(契約者情報記録カード)」の9月末時点の契約数は前年同月末比3・7%増の1284万回線。楽天モバイルが月額0円の料金プランを廃止したことで、同社の利用者の一部がMVNOへ流出したとみられる。MVNO各社はこの特需を取り込みつつ、中長期の成長に向けた次の一手が求められる。(張谷京子)
MVNOは近年、新規契約数の減少が続いていた。NTTドコモやKDDIといった移動体通信事業者(MNO)が格安の料金プランを投入したことや、楽天モバイルがMNOとして参入したことなどにより、低価格帯の携帯通信サービスの競争が激化。MVNOは武器としてきた価格優位性が薄れ、苦戦を余儀なくされた。
独自サービス型SIMカードとは、MVNOがSIMカードを活用して独自の料金プランで提供する回線サービス。MM総研の調べでは、2020年9月末の独自サービス型SIMの回線契約数は1536万だったところ、21年9月末には1239万に減少した。だが22年9月末には1284万に回復し、2半期連続のプラス成長を記録した。
背景の一つにあるのが、楽天モバイルによる月額0円プランの廃止だ。同社は5月、月間データ量1ギガバイト(ギガは10億)以下は0円としてきた枠組みを取りやめると発表。低価格志向の利用者の一部は楽天モバイルからMVNOへ乗り換えた。
実際、楽天モバイルは0円プランの廃止発表以降、携帯通信サービス市場でシェアを落としている。総務省がまとめた移動系通信の契約数によると、9月末時点の同社のシェアは、3月末時点比0・2ポイント減の2・2%。一方、MVNOは同0・4ポイント増の13・4%に拡大した。
ただ、独自サービス型SIMの回復を支えるのは、楽天モバイル由来の特需だけではない。社会のデジタル化を背景にした、IoT(モノのインターネット)向けサービスの伸びも寄与している。MM総研によると、同SIMの回線契約数は25年3月末に22年3月末比37・3%増の1729万に到達。IoT向け回線比率は48・2%に達すると予測する。
少子高齢化が進展する中でMNOが格安プランを展開しており、MVNOは個人向け通信サービスの大幅な伸びは期待できない。MVNO各社はいかにIoT向けサービスを強化して契約数の増加につなげられるかが問われそうだ。