名目賃金は31年ぶり伸び率も…実質賃金を2年ぶり減に押し下げた物価高の威力
厚生労働省が発表した2022年の毎月勤労統計調査(速報値、従業員5人以上)によると、月平均の現金給与総額(名目賃金)は、21年比2・1%増の32万6157円となった。31年ぶりの大幅な伸び率となったが、物価高騰が響いて実質賃金は減少しており、名目と実質の賃金格差が一段と開いている。
名目賃金が伸びたのは、新型コロナウイルスの感染拡大の影響が落ち着き、経済活動も再開され、所定内給与の伸びや賞与など特別給与が4年ぶりにプラスとなったことが主因。コロナ前の19年の水準まで戻っている。
一方、名目賃金から物価変動の影響を除いた実質賃金は月平均で同0・9%減と2年ぶりに減少。名目賃金の伸びを上回る物価上昇が続いていることが響いた。物価の先行きの見通しが不透明なことから、厚労省は「賃金動向を引き続き注視していく」としている。
1人平均の総実労働時間は、一般労働者が同0・2%増の162・3時間、パートタイム労働者は同1・0%増の79・6時間。製造業の所定外労働時間は同6・1%増だった。
常用雇用指数は同0・9%増の102・0で、18年連続の増加。パートタイム労働者の比率は同0・29ポイント上昇の31・57%と、2年連続で上昇した。
22年12月単月の実質賃金は前年同月比0・1%増と9カ月ぶりのプラス。しかし、特別給与の増加が主な要因だったことから、厚労省は「今後も(実質賃金の)プラスが続くとみるのは難しい」と、楽観視していない。
日刊工業新聞 2023年02月08日