全体の6割が賃金底上げ、「新資本主義」従業員への分配進む
日刊工業新聞社が10月31日に発表した「第18回企業力ランキング」(経済産業省後援)は、産業界の潮流を反映するため毎回、アンケートの設問を見直している。今回の調査では新たに岸田文雄政権が看板政策として掲げる「新しい資本主義」に関わる設問を設けた。「成長と分配」に関係するものとして、賃金体系の改善などについて聞いた。2022年4月以後、賃金・成果報酬体系を見直し、従業員の平均賃金の底上げを図った(今期引き上げ見込みを含む)のは全体の59・0%に及ぶことが分かった。
国は所得の向上につながる分配を唱えており、民間企業の積極的な賃上げを支援するため、賃上げ税制を抜本的に拡充した。大企業については、継続して雇用される従業員の賃上げを評価するとともに、税額控除率を最大30%まで引き上げている。
企業力ランキング調査では、22年4月以降、「賃金・成果報酬体系の見直しを行い、従業員全体(平均)の賃金引き上げを行った(もしくは引き上げ見込みである)」との設問を立てたところ、全体の約6割が「はい」と回答した。企業区分でみると、グローバル型企業(営業利益率7%以上で海外比率50%以上)では66・7%、営業利益率12%以上の企業では62・2%と全体よりも先行している。
日本企業はコロナ禍による逆風を受けながらも、優良企業においては従業員への還元を実施する体力を回復していると言える。
一方、22年度は円安、ロシアのウクライナ侵攻などに起因する資源、食料高が家計にも影を落としている。消費者物価上昇を上回る実質的な賃金上昇を実現できている(今期中の実現見込みがある)かの問いには、過半数が「はい」と回答。法人税上位企業では70・4%が物価上昇に見合う賃上げを実現する見通しだ。
日刊工業新聞 2022年11月01日