中小企業の7割「賃上げ」意向の背景
商工中金が発表した中小企業の賃上げ動向に関する調査によると、2023年に従業員の定例給与・時給を引き上げる予定の企業は、未定やその他を除いて前年並みの72・5%を占めた。平均引き上げ率は1・98%で前年に続き約2%の伸びを維持する見通し。人手不足を背景に賃上げに前向きな中小が目立った。
同調査は22年11月中旬―12月初旬に取引先中小・中堅企業約4300社に対して実施し、約2280社から回答を得た。定例給与・時給の引き上げに、定期昇給分は含めない。
23年に賃上げを実施する理由としては「従業員のモチベーション」が81・5%、「人材確保」が55・3%、「物価上昇」が38・4%と上位を占めた。一方で「業績改善」は23・9%にとどまり、過去の調査と比較し、回答割合が低下傾向にある。背景について商工中金は「人手不足の深刻化に伴い、業績を反映した賃上げよりも、人材確保のための賃上げを重視するようになった可能性が考えられる」と分析する。
物価上昇への対応策では「燃料高騰に対応する補助として通勤費を増額した」(運輸業)、「物価上昇に対する補填として一時金20万円の支給を行う予定」(卸売業)など賃上げに加え、手当てを支給する企業の動きがみられた。
商工中金は持続的な賃上げに向け「価格転嫁はもちろん生産性向上や付加価値の高い商品・サービスの創出が重要なテーマになる」と指摘した。
日刊工業新聞 2023年1月26日