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「インボイス」対応に不安…経済界から懸念の声・声・声

2023年度税制改正に関する要望が相次いでまとまり始めた。このうち、経済団体の日本商工会議所や大阪商工会議所がまとめた要望の論点の一つが、23年10月に導入予定の消費税の新たな経理方式「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」への対応だ。日商は消費税インボイス制度の事務負担の軽減措置やそれが困難な場合には「制度の導入延期が必要」と指摘している。

インボイス制度は、適格請求書(インボイス)を用いて仕入れ税額控除を受ける制度。日商のまとめた提言によると、導入された場合、約500万の免税事業者が取引から排除されたり、不当な値下げ圧力などを受けたりする懸念がある。また、発行する請求書の様式変更、システムの入れ替え・改修、受け取った請求書などに登録番号があるかの確認など、事業者にとって多大な負担が生じることになる。

小規模企業を中心に取り組みが遅れていることから、日商は「このまま導入すれば大混乱は必至」(産業政策第一部)と指摘。税務申告手続きの負担軽減措置などの対応策や制度導入時期の延期も検討すべきとした。大商も導入準備が遅れている中小企業を中心に、制度の周知徹底と対応策の拡充を求めた。

また、日本税理士会連合会も「簡易で安価な制度整備や負担軽減措置が講じられるまで導入を延期するか、少なくとも中小企業の実務を踏まえた柔軟な運用を行うべきだ」として、負担軽減策や延期を求めている。

日商は「日本税理士会連合会とも綿密に連携して、政府に慎重な対応を求めていきたい」としている。

日商と東京商工会議所が各地商工会議所の会員企業に向けて5―6月に行った「消費税インボイス制度」の実態調査によると、導入に向けて特段の準備を行っていない事業者の割合は、全体で42・2%と21年の59・9%から減少したものの、「売上高1000万円以下の事業者」では60・5%に上り、小規模の事業者ほど準備が進んでいない実態が浮き彫りになっている。

制度導入に向けた課題は「そもそも制度が複雑でよく分からない」が47・2%で最多の結果となった。

このほか、日商と大商は人への投資やスタートアップ支援も提言した。日商は中小企業の人への投資を促す賃上げ促進税制の繰越控除措置の創設や、創業・スタートアップの促進を図るための業績連動給与の適用対象拡大や創業後5年間の法人税減免などを求めた。

大商は人材育成支援として給与所得者の特定支出控除を求めた。休職者・失業者が学び直しの際にかかる費用を再就職後の収入から控除できる能力開発控除(仮称)の創設も求めた。スタートアップ支援では、ストックオプションに関する優遇措置の拡充や、暗号資産などに関する税制の整備を要求した。

日刊工業新聞 2022年9月22日

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