荏原が照準、「ターコイズ水素」事業化の本気度
ポンプや半導体製造装置の荏原が、水素の事業化に取り組んでいる。水素は燃焼時に二酸化炭素(CO2)を排出せず、クリーンなエネルギーとして期待される。2021年8月に全社プロジェクトを発足し、製造、輸送、使用それぞれの事業化に着手した。
水素は製造方法により種類が分かれ、荏原はターコイズ水素に狙いを絞った。天然ガスなどのメタンを熱分解して製造する水素だ。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の事業で、物質・材料研究機構などと共同研究している。特徴は固体炭素も製造できることだ。
固体炭素はゴムの補強材に使われるカーボンブラックなどに活用できると見込む。今後は炭素メーカーにも共同研究を呼びかけ、26年の商用化を目指す。開発中の製造技術は、水素を発生させるプロセスと固体炭素を取り出すプロセスを別々に制御でき、同じ固体炭素でも、カーボンブラックやカーボンナノチューブなどに作り分けられるのが強みだ。
輸送では、マイナス253度Cで液化した水素を運ぶポンプを開発する。水素発電用に液化水素を供給する用途を想定する。
使用では、インターステラテクノロジズ(北海道大樹町)が開発中の超小型人工衛星打ち上げロケット「ZERO」のうち、エンジン用ターボポンプを室蘭工業大学を含む3者で共同開発している。推進剤タンクから燃焼器に燃料と酸化剤を送る心臓部だ。4月には性能を確かめる要素試験「水流し試験」を実施した。23年度には燃焼器などを含むエンジン統合試験に進む予定だ。
これらを事業化し、水素関連の売上高を30年12月期に300億円以上、40年12月期に2000億円にする目標だ。21年12月期の売上高が6032億円であることを考慮すると、それなりの規模だ。エネルギー利用などで水素が社会に普及する前提ではあるが、浅見正男社長は「それぐらいはできると思っている」と力を込める。