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住友化学は「ターコイズ」…旭化成や東レなども挑む水素製造技術開発の現在地

住友化学はマイクロ波化学(大阪府吹田市)と連携し、メタンを直接熱分解して水素を製造する「ターコイズ水素」技術の開発に着手した。工程で二酸化炭素(CO2)を排出せず、固体の炭素を副生する。2030年代の実証実験を目指す。環境負荷の低い水素製造技術は脱炭素社会実現のカギ。旭化成東レグリーン水素技術の事業化を目指すなど、化学業界で取り組みが加速している。

ターコイズ水素は、再生可能エネルギー由来電力を使う点やCO2を放出しない点が特徴で、欧州などで研究が進む。住友化学などは電気の利用効率の高いマイクロ波を使い、熱分解にかかるエネルギーの抑制を狙う。

メタン源は天然ガスもあるが、同社は生ごみ発酵で発生するメタンや化学プラント由来のメタンの有効利用を想定する。

特に基礎化学品を製造するエチレンクラッカーで併産されるメタンは、新規用途の開拓が求められている。現在は燃焼してクラッカーの熱源に利用しているが、CO2を発生するため、将来はアンモニアによる代替が検討され、余剰となる。

国内化学業界では水素関連の取り組みが活発化している。旭化成はグリーン水素製造向けに、アルカリ水電解装置の事業化を目指す。21年8月から再生可能エネルギー由来電力を用いた大規模水素製造と水素活用について日揮ホールディングス(HD)と共同実証事業を始めた。

東レは同9月、独シーメンス・エナジーとグリーン水素製造で戦略的パートナーシップを結んだ。東レの電解質膜をシーメンスの水電解装置に組み込む。

三菱ケミカルは太陽光エネルギーを用いて水から水素を製造する人工光合成を研究している。各社の技術開発は、環境負荷の低い水素の普及の後押しとなると期待される。

日刊工業新聞2022年1月13日

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