コロナ禍で大打撃、ANAが経営安定へ確立したい「経済圏」の全容
ANAホールディングス(HD)が非航空事業を強化している。約3800万人が加盟するマイレージプログラム「ANAマイレージクラブ」をゲート(入り口)アプリケーションとして中核に置き、日常生活でマイルを使用する「ANA経済圏」の確立を目指しており、1月下旬にも新しい電子商取引(EC)モールを始めるなど準備を進める。航空事業はコロナ禍の最悪期を脱したが、ボラティリティー(変動性)の高さが課題。非航空事業の強化で経営の安定につなげる。
「一つひとつの『ミニアプリ』を充実させないとゲートアプリの魅力が深まっていかない。お客さまがしっかりと回遊する仕組みを作ればもっともっと付加価値が高まる」―。ANAHDの芝田浩二社長がこう強調するように、ゲートアプリの利用者数を増やすには、アプリの中のアプリであるミニアプリを充実させることが不可欠だ。
ANAHDでは22年10月に既存のANAマイレージクラブのアプリをゲートアプリへと刷新。航空券の予約や搭乗などをする「ANAアプリ」や、徒歩や交通機関の移動距離などに応じてポイントがたまる「ANAポケット」などをミニアプリとして実装している。
新たに実装するECモールのアプリはミニアプリの中でも中心となるもので、ANAグループの既存のECサイトを集約するほか、日用品や家電、美容・健康など提携企業にも積極的に出店してもらうなど、モール形式によって品ぞろえを充実させる。旅行など「非日常」だけでなく、「日常生活」でもマイルをためたり使ってもらえたりするようにし、ECモールとしての存在感を高めていく。また、23年春には2次元コードの一種であるQRコード決済「ANAペイ」の機能を拡充し、QRコード決済のほかタッチ決済などにも対応するなど決済機能も強化する予定だ。
こうした取り組みを通じてゲートアプリの中で利用者が回遊する仕掛けを随所に作ることで、利用データを取得・分析。旅行だけでなく、ライフステージに応じた金融など各種サービス提案などにも役立てて、顧客生涯価値(ライフタイムバリュー)を高め、ANA経済圏の確立を進めていく。
コロナ禍によって航空会社は大きな打撃を受けており、ANAHDも例外ではなく、22年3月期連結決算は2期連続の当期赤字だった。政府の旅行支援策「全国旅行支援」や水際対策の緩和などを受けて国内線・国際線ともに復調した結果、23年3月期は黒字転換を見込むものの、航空事業と連動しない分野で収益を拡大することが急務となっている。計画では非航空事業の収入を数年以内にコロナ禍前の2倍となる4000億円にまで増やす方針だ。