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DXで「つなぐ」、三菱商事が開発・実装するシステムの全容

三菱商事はデジタル変革(DX)を駆使して電力ソリューションや金属資源、石油・化学ソリューションなど10の営業グループ、そして約1700社のグループ会社に横串を刺す。システム開発と実装をグループ内で内製化し、機動力を高め、知見の蓄積を可能にする。

2021年4月からコンシューマー産業グループの食品流通分野で在庫を最適化する実証実験をスタート。DXを活用して需要を予測し、三菱食品がローソンに供給する商品を調整する。人工知能(AI)のアルゴリズム(計算手順)などを手がける三菱商事完全子会社のエムシーデジタル(東京都千代田区)がシステムを開発。これを三菱商事子会社のインダストリー・ワン(同)が実装支援した。

「品切れにならない程度の在庫にすることで、最大30%の在庫量を減らすことができた」(三菱商事)ことから、22年から三菱食品の全国約200カ所の物流施設に導入を進めている。今後、データの蓄積が進むため、三菱商事は「需要予測システムの精度アップを目指す」とする。

規模が大きく、効率化が見込めるとともに、食品ロスなど社会課題があることから、食品流通から始めたが、同社は「一定サイズのバリューチェーンがある事業に応用できる」と見る。今後も全産業分野で連携と効率化を促す。

そのカギを握るのが7月に発足した産業DX部門だ。「中期経営戦略2024」の柱の一つであるDX戦略を推進する役割を担う。DXでグループ各社を「つなぐ」だけではない。その先にあるのは自らの手で構築したDX基盤を提供することだ。

競争ではなく、むしろ協調が必要な分野にソリューションを提供し、バリューチェーンの質を高める。さらに地域などの社会コミュニティーを「つなぐ」構想もある。それを実現するには、まず同社がDXでグループ力を発揮できることを実証する必要がある。

日刊工業新聞 2022年11月24日

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