7社中6社が過去最高益へ…大手商社の成長持続に必要なこと
円安と資源高を背景に、大手商社7社が2023年3月期連結業績予想(国際会計基準)で当期利益を上方修正した。6社が過去最高を更新する見通しだが、ロシアによるウクライナへの侵攻が長期化するなど先行きは不透明だ。資源価格も落ち着きを見せる中、成長を持続するには非資源分野の強化が必要になる。
足元の業績が好調に推移する一方で、先行きには不透明感が漂う。ロシア政府は同国極東の石油・天然ガス開発プロジェクト「サハリン2」の新運営会社に三菱商事と三井物産の出資を承認。「サハリン1」についても、伊藤忠商事や丸紅などが出資するサハリン石油ガス開発(SODECO)の出資を承認した。
ただ「出資者の構成は確定しておらず、不確実性の高い状況は継続している」(三井物産の重田哲也最高財務責任者〈CFO〉)のが現状だ。
その中で三菱商事は23年3月期に当期利益を1兆300億円と予想し、商社業界で初めて1兆円を超える見通し。だが、中西勝也社長は資源価格を調整した6500億円を「実力値」と評価する。外部環境が悪化しても安定して収益を確保できる事業ポートフォリオの構築を目指す。
同社は秋田・千葉県銚子地区で着床式洋上風力発電の事業者に選定され、エネルギー・トランスフォーメーション(EX)とデジタル変革(DX)の一体推進による地域創生を成長戦略に掲げる。豊田通商はカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)に30年までに1兆6000億円を投資し、脱炭素時代の中でも成長を持続する方針だ。
三井物産は資本参加するマレーシアのIHHヘルスケアとの協業を加速する。同社はアジア最大級の病院グループで、今後、アジア全域に病院・診療所を拡充するとともに、経営改革やDXで治療の品質を高める。各社も非資源分野に力を入れており、景気の変動に強い体制構築を進める。