車載電池など強み“専鋭化”、パナソニックHD「攻めの投資」の行方
4月に持ち株会社体制で始動したパナソニックホールディングス(HD)が意思決定を早め、攻めの投資に動いている。急拡大する電気自動車(EV)市場に対応し、40億ドル(約5600億円)以上を投じて米国カンザス州にテスラなど向け車載電池工場を新設するほか、2021年度までに約8600億円で供給網管理ソフトウエア会社を買収した。強い事業を「専鋭化」して24年度までの累計キャッシュフロー2兆円創出を目指している。
同社の23年3月期連結業績予想は売上高が8兆2000億円、営業利益は3200億円で単純に数字を比べると初めて売上高が8兆円を超えた2005年3月期(8兆7136億円、営業利益は3084億円)から17年足踏み状態。この間同社は韓国メーカーなどとの競争激化で液晶パネル事業の撤退や、需要減退による半導体事業売却などで成長の柱をつかみきれずにきた。
モルガン・スタンレーMUFG証券の小野雅弘株式アナリストは「モノづくりは得意だが、投資タイミングの意思決定がタイムリーではなかった」と指摘する。“次の柱”が定まらない同社にとって、成長分野への相次いだ大型投資決定は「スピード感が増した印象」(同)と評価する。
「事業会社が稼いだキャッシュを元に自ら投資し、各事業領域でさらなる成長を目指す」(楠見雄規社長)のが基本だが、車載電池など成長領域にはさらに3年間で4000億円の戦略投資枠も設け、投資タイミングはHDでも見極める。
22年9月現在の現金および現金同等物は8471億円で、財務に問題はないが、エンターテインメントに舵を切ったソニーグループや社会インフラ系ソフトウエアで成長する日立製作所に市場評価は水をあけられている。純資産に対する株価の割高・安を測る純資産倍率(15日現在)はソニーグループが2・08倍、日立が1・41倍に対しパナHDは0・75倍にとどまる。各事業会社が投資に見合うリターンを達成し、強さを取り戻せるかに期待がかかる。
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