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トヨタがピックアップトラックの大衆ユーザー再深耕、新しい世界戦略車「IMV0」の全容

新興国で戦略拡充
トヨタがピックアップトラックの大衆ユーザー再深耕、新しい世界戦略車「IMV0」の全容

トヨタがタイで初披露した、新しい新興国向け世界戦略車「IMV0」の試作車

顧客層の裾野拡大図る

トヨタ自動車が、新興国でのピックアップトラック戦略を拡充する。このほどタイで、新しい世界戦略車「IMV0(ゼロ)」の投入計画を発表。低価格と丈夫さを追求したモデルで、手薄になりつつあった大衆ユーザーの再深耕を図る。タイでは同時に、政府が掲げる電気自動車(EV)普及策に合わせてピックアップEVの生産も視野に入れる。幅広いラインアップをそろえ、全方位で顧客の獲得を狙う。(バンコク=政年佐貴恵)

「皆が驚く価格になる」―。IMV0初披露の場となった、タイの現地法人60周年式典で開発責任者は、こうメッセージを寄せた。

元々「IMV」はプラットフォーム(車台)を共通化しながら、各地のニーズに合わせて車を生産、供給する新興国向けの世界戦略車プロジェクトだ。多目的スポーツ車(SUV)からピックアップトラック、ミニバンまで、一つの車台で5車種を展開している。

ただアジアだけでなく欧州など展開地域が広がり、各国の安全・環境規制に応じ先進技術搭載や電動化に対応。コストが増し、特に荷物の運搬など商用車としてピックアップを利用する郊外の大衆ユーザーが求めやすい「新興国向けモデル」という立ち位置が曖昧になっていた。そこでIMV0は車台の構造や部品などを見直し、低価格化と堅牢性の両立を目指す。原点に立ち返ったIMV派生モデルと言える。

開発を主導するのは、タイの設計開発統括会社、トヨタ・ダイハツ・エンジニアリング&マニュファクチャリング(TDEM)だ。ユーザーの利用実態や架装メーカーの業務といった現地ニーズを徹底調査。荷物や物販など、多彩な用途に合わせて荷台を変更しやすい設計にした。

既存の生産設備を利用できるなど、これまで積み上げたIMVの知見も活用する。駆動方式はディーゼルエンジンや電動車も含めて検討しており、2023年の発売を目指す。ミッドサイズビークルカンパニーの中嶋裕樹プレジデントは「将来はタイの国民車としたい」と力を込める。

IMV0で狙う領域は、リカーリング(継続課金)型ビジネスの強化も期待できそうだ。顧客は純正部品を使って保守や改良ができ、トヨタはこれまで非純正メーカーに流れていたアフタービジネスを高品質で取り込める。双方にとってウィンウィンの関係構築が可能だ。

並行してEVにも布石を打つ。現行のハイラックスRevoをベースにしたEVの製品化を計画。タイは30年までにEVの国内生産比率を30%にする目標を掲げており、普及や生産に対する税制優遇策を講じる。トヨタも合意しており、トヨタ・モーター・タイランドの山下典昭社長は「タイ政府の目標に貢献できるよう取り組んでいく」と語る。

新興国ではEVをはじめ先進的な次世代車を求める高所得層と、生活や仕事の足として利用する大衆層に、ピックアップトラック市場が二極化されつつある。それぞれの象徴となる車両の投入で、トヨタの顧客基盤はさらに広がりを見せそうだ。


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日刊工業新聞 2022年12月16日

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