タイヤ生産工場を脱炭素化、住友ゴムの水素利用法
住友ゴム工業は白河工場(福島県白河市)において、タイヤの製造工程で大量に使用する熱(蒸気)を製造するボイラの燃料を水素に転換するシステムを2023年1月にも稼働する。従来、燃料に使用していた重油や天然ガスを、二酸化炭素(CO2)を排出しない水素に転換。工場の脱炭素の取り組みを加速する。
同工場はタイヤ生産では日本でも大きい工場。水素への取り組みは21年に新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の事業に採択され、実証実験を続けてきた。
タイヤは部材の材料を成形し、熱と圧力で「加硫」する化学反応を経て製造する。加硫工程には大量の蒸気が必要だが、これまでは重油、天然ガスを燃料に熱を供給してきた。これを、貯蔵設備とボイラを工場に導入し、水素に転換する。燃料の水素は近隣の郡山市の化学工場から調達する。1時間あたり時間100立方メートルの水素を燃焼させる。
今回は開発中の革新的なタイヤ製造システム「NEO―T01」の加硫工程に水素由来の蒸気を供給する。同工場では年間5万4000キロリットル(原油換算)のエネルギーを消費しており、今回の水素利活用事業では全体の1%程度が水素エネに置き換える計算。「30年にCO2排出量を17年比50%削減、50年にゼロを目指しており、水素への転換を進める」(面川寿彦工場長)という。今後、規模の大型化や白河工場全体への拡大、国内外の工場への導入も検討している。
同工場は23年に駐車場の屋根に合計2000キロワットの太陽光発電(PV)を設置し、PPA(電力販売契約)方式で運用を開始。天然ガスでの4000キロワットのコージェネレーション(熱電併給システム)も導入するなど、CO2削減策に力を入れてきた。今後、「水素ボイラとPVを合わせてCO2排出ゼロを実現し、福島県が進める40年に再エネ100%を目指す取り組みに貢献していく」(面川工場長)としている。