中小企業が温室効果ガス「50%削減」目標を設定して得た営業効果
菅義偉首相が2030年度までに国内の温室効果ガス排出量を13年度比46%削減すると表明したことで、企業にも厳しい温暖化対策が迫られようとしている。そんな中、中小企業15社が、排出削減目標を設定することだけでなく、国際的な基準で“高い目標”として認められた。排出削減が大企業との取引条件になるとの見方もあり、中小企業も脱炭素へ動きだした。
世界700社認定
気候変動対策の世界ルール「パリ協定」達成に貢献する企業の目標を「サイエンスベースドターゲッツ(SBT)」として認定する国際的な活動がある。年2・5%以上の削減ペースが目安となっており、世界では700社以上が認定済み。日本企業は認定99社中、15社が中小だ。
自動車部品のプレス加工を手がける協発工業(愛知県岡崎市)は、自社の排出量を30年までに18年比50%削減する目標を設定した。持続可能な開発目標(SDGs)に貢献する具体的な活動として温暖化対策に着手し、SBTの認定を受けた。
30年「ゼロ」に
大企業はサプライチェーン全体の脱炭素化が求められる。協発工業の柿本浩社長は「遅かれ早かれ、取引先から排出削減を求められる」と見通す。高い目標に向けて着実に削減策を打っておくと、要請が来ても慌てずに対応できる。
住宅メーカーのエコワークス(福岡市博多区)は30年の排出実質ゼロを目標に掲げる。もともと「18年比50%減」の30年目標でSBT認定を受けていた。国の目標引き上げを受け、同社も厳しく見直した。小山貴史社長はSBT認定の効果として「脱炭素に真剣な企業として国際基準で認めてもらった。中小企業でも社会に範を示せ、社員のモチベーションになる」と語る。
はや営業効果
リサイクル業の加山興業(名古屋市熱田区)も「18年比50%減」の30年目標でSBT認定を受けた。同社の行動を評価した企業から取引の新規申し込みがあるなど、営業で効果が出た。海外進出時にもSBTが信頼獲得につながると確信する。
ESG(環境・社会・企業統治)金融の台頭があり、上場企業は目標設定やSBTが投資家など社会から評価されるようになった。中小企業には取引先との関係構築や新規顧客の獲得などの効果がありそうだ。
エコワークスの小山社長は「高い目標を掲げる中小企業を増やし、行政にも施策を働きかけたい」と発信力にも期待する。