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センサー活用・ロボ導入…介護施設がDXで得た効果

チャーム・ケア・コーポレーションは、運営する介護施設のデジタル変革(DX)化を進めている。7月には「介護DX推進課」を創設。活動の一環として、センサーを活用した見守り機器やコミュニケーションロボット、床ずれ予防の介助エアマットなどを導入。業務効率化により職員の負担が軽減するだけでなく、望まないタイミングでの接触がなくなり入居者の心理的負担を軽減する効果も出ている。(編集委員・安藤光恵)

現在、1000室以上に見守り機器を導入済み。天井やトイレ、ドア、ベッドなどにセンサーを設置して心拍数や呼吸数などを観察。睡眠中か在室で起きているかなど、タブレット端末やモニターで複数の入居者の状況を一度に確認できる。これにより従来、2時間に1回のペースで職員が巡回していたが、人手が要る別の業務に集中できるようになった。職員同士の情報交換にはインカムを導入して迅速化し、緊急対応が必要な事態も発見しやすくした。

センサーの活用は入居者からも好評だ。巡回による訪問では入居者が求めていないタイミングで人と関わる必要が発生したが、生活のペースが守れストレスが軽減したという声が上がっている。

その効果は夜に最も発揮される。夜間の巡回で部屋の扉を開けることで定期的に目が覚めることもなくなり、睡眠がとりやすくなった。介護DX推進課の大野世光課長は「センサーの活用は介護従事者と入居者の双方に利点が大きかった」と手応えを感じる。

寝たきりの人向けには、同じ姿勢で横になり続けることで発生する床ずれの対策として、自律的に少しずつ傾斜が変わり体重がかかる位置を移動させるエアマットも導入。従来は職員の手で姿勢を変えて対応していたが、やはり触れることで目が覚めて睡眠を阻害する課題があった。「従来は『目と手をかけるのがよい介護』という価値観があったが、引き算の介護の必要性が見えてきた」(大野課長)と新たな気付きを得た。

現在、兵庫県の3施設で技術導入の詳細な検証をしている。その一環として、コミュニケーションロボット「LOVOT(らぼっと)」を導入。ロボットという“他者”に自主的に関わる機会により入居者の日中の活動が充実している。介護を受けている入居者にとってロボットの世話をすることで「他者のためにできることが発生し、自己肯定感が得られている」(大野課長)という。女性入居者が大半の中で、交流がしづらかった男性入居者から特に好意的な反応があった。

また、ウェルヴィル(東京都文京区)と連携して自由会話のできる人工知能(AI)アバター(分身)を開発中で、実証実験をしている。同ロボットの活用で、会話をしたい入居者からの緊急時以外の呼び出し件数の減少を見込む。会話AIにより、毎日の体調や認知症の兆候の有無など健康状態の把握もしやすくなる。

日刊工業新聞 2022年10月25日

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