事業撤退に区切りのIHI、”攻め”に転換か
IHIは多様な事業を抱える重工業大手として、選択と集中を進めてきた。2016年度から3年間の中期経営計画で、成長が難しいと判断した事業は撤退を検討すると表明。その後実行に移した。事業の単位を示すSBUは16年度の27から現在は18に減った。
一例がミニショベルなどの建設機械事業だ。子会社IHI建機を同業の加藤製作所に16年に譲渡した。代表例は角型の液化天然ガス(LNG)タンクを中心とする海洋構造物事業だ。原油価格低迷で需要が伸びず、愛知工場(愛知県知多市)を閉鎖し、18年に撤退した。
本体と子会社間の事業統合も進めた。プラント関連は19年にIHIプラント(東京都江東区)を発足させ、LNGタンクや原子力関連など幅広い製品を1社にまとめた。本体と同社に受注案件のリスク管理を集約したことで、採算が悪化する事例が減った。
原動機事業は本体のガスタービンや子会社の新潟原動機とディーゼルユナイテッドを統合し、19年にIHI原動機(同千代田区)が発足した。このうち船舶用エンジンは9月、同業で高シェアの三井E&Sホールディングスに23年4月に売却する契約を結んだ。
反対に成長が見込める事業は拡大してきた。子会社IHI運搬機械(同中央区)は機械式立体駐車装置の保守・保全業務を同業各社から譲り受けてきた。12年に子会社化した明星電気(群馬県伊勢崎市)は親子上場解消を狙い、21年に完全子会社化した。同社の気象観測データをIHIが手がける水門に提供して洪水予防サービスを開発するなどシナジー創出を目指す。
建機撤退後も残っていた建機教習事業を売却するなど22年も撤退が続いたが、これである程度の区切りが付いたと言える。今後はカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)に向け、自社だけでは対応できない分野でのM&A(合併・買収)や提携も考えられる。攻めに移る時期が訪れそうだ。
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