ダイキン・富士通ゼネラル…エアコンメーカーの国内回帰が広がる要因
地産地消や為替変動の影響低減を視野に海外生産を推進してきた国内のエアコンメーカー各社。富士通ゼネラルが製品の国内生産の再開を検討したり、ダイキン工業が部品の国内調達拡大を検討したりするなど国内回帰の動きがじわりと広がってきた。中国をめぐる地政学リスクや新型コロナウイルス感染拡大によるサプライチェーン(供給網)の混乱に加え、円安進行も後押しの要因になっていると見られる。
富士通ゼネラルは感染症のまん延による供給網の混乱などを踏まえ、エアコンの国内生産を再開する検討に入る方針を明らかにした。2023年度からの次期中期経営計画を実行する中で具体策を練る。再開が決まればエアコンの国内生産は、浜松市内にあった工場を01年に閉鎖して以来となる。
斎藤悦郎社長は10月の決算説明会で「(コロナ禍で)サプライチェーンが混乱したことを教訓に、消費地の生産体制を拡充する」と述べた。中国上海市とタイにあるエアコンの主力工場のうち、上海が新型コロナの感染拡大に伴うロックダウン(都市封鎖)で操業停止を余儀なくされ、日本への製品出荷が滞ったことが背景にある。
ダイキンは「グローバリゼーションを先取りし変革する必要がある」(井上礼之会長)として、円安が進んでも成長戦略の基本方針は変えていない。だが部品の現地調達を推し進める一方、供給網の複線化にも注力する。電装品は中国からの調達が都市封鎖で今春、深刻な不足に陥り、滋賀製作所(滋賀県草津市)で一部を組み立て始めた。グローバル化に伴う部品調達のリスク管理に万全を期す。
日立ジョンソンコントロールズ空調も安定した製品供給の観点から「今後、国内生産機種や生産量を増やすことも検討している」(同社)とする。
パナソニックは日本向け空調機を含め、中国生産品のうちいくつかの日本回帰を検討中だ。22日開催の事業説明会で品田正弘社長が「室外機を日本で生産した方が効率が良いのではなどと議論している。他の白物家電も検討中だ」と述べた。
生産拠点を移転する場合、いったん構築した供給網の再構築には手間がかかる。円安の進行や地政学リスクだけでなく、中国本土の新型コロナの新規感染者が再び増えるなど状況がすぐに好転する動きは見られないだけに、国内回帰に向けて、経営層の難しいかじ取りが続きそうだ。
日本冷凍空調工業会が7月にまとめた「21年の世界のエアコン需要推定」によれば、21年の世界のエアコン全体需要は前年比約2%増の1億1004万台。最大需要地の中国は同約2%減の4130万台。世界全体の約38%を占める。次いで日本・中国を除くアジアが1798万台、北米1651万台、日本1020万台としている。
【関連記事】<考察・東芝>「日本の総合電機は日立と三菱電機の2社になる」