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花王が稼働へ、永久磁石を活用した最先端の化粧品生産システムの全容

花王が稼働へ、永久磁石を活用した最先端の化粧品生産システムの全容

フローティングリニア技術を活用した加飾成形技術で化粧品の上に画像を描く

花王は化粧品事業で多様化ニーズに応えるため、磁力を活用した「フローティングリニア技術」による新生産システムを開発、2023年内に稼働する方針だ。永久磁石を内蔵した搬送パレットを浮遊させ、生産ライン上を高速・高精度で自在に制御。3種類を同じラインで同時に生産することができる。1種で年2万個以下の多品種製造に対応する。同技術による加飾成形技術も開発し、パーソナルニーズに合わせたデザインにも応える。(編集委員・井上雅太郎)

花王が「ダイナミックセル生産技術」と名付けた新システムは、オーストリア・B&Rの日本法人(横浜市西区)と京都製作所(京都市伏見区)の協力で開発した。磁力の反発・吸引力を制御するプログラムにより、パレットを自在に移動させるリニア搬送システムを活用している。

生産ライン上に製造を行うセルを数カ所に配置。それぞれでロボットが集中的に化粧品を完成させる仕組み。必要に応じて各セルで異なる品種を製造したり、同じモノを量産したりできる。また、加飾成形技術は搬送部材を高精度に移動・回転・傾斜する動作により入力されたデザインを部材上に再現する。例えば、化粧パウダー上に化粧品を使って画像を描くことができる。

花王は新システムを化粧品の主力である小田原工場(神奈川県小田原市)に導入する方針。生産能力などは非公表。藤井行将技術開発センター長は「新システムは切り替え頻度を大幅に減らせるほか、無人化に近い操業が可能。浮遊搬送のため接触部がなくメンテナンスの削減にもなる」と導入メリットを強調する。

同社はダイナミックセル生産技術に関する多数の特許を出願中。多品種少量を効率的に生産できるため、食品業界など、同業の化粧品メーカー以外に向けてライセンス供与する可能性も検討する。

日刊工業新聞 2022年11月22日

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