印刷時のCO2を4割削減、花王が「超低温定着トナー」製品化
花王はトナー・トナー用バインダー事業で、定着温度を従来に比べ40度C以上低減し100度C以下にできる超低温定着トナー「LUNATONE」を2024年度にも市場投入する。粒径5マイクロメートル(マイクロは100万分の1)ほどのカプセル構造のトナーで、内部の結晶性ポリエスエルの熱物性を下げることで低温定着できる。印刷時の二酸化炭素(CO2)排出を約40%削減でき、弱熱フィルムなどの印刷も可能になる。基礎技術を開発済みで、今後、量産技術を確立する。
花王はレーザープリンター向けのトナー・バインダーの大手メーカーでもある。主にポリエステル樹脂などの原料を微粒子に粉砕してトナーを製造するが、LUNATONEは低温定着化するため改良したケミカル法により製造する。これによりトナー粒をカプセル構造にでき、内部の熱物性を微細にコントロールできる膜構造を形成する。
レーザープリンターなどはトナーを熱や圧力で溶かし用紙に定着させる。従来の低温トナーでも140度C以上の熱が必要だが、新技術により100度C以下での定着が可能。また熱応答速度を高めたため、従来と同じ濃度でトナー使用量を大幅に減らせる。
現在、各社プリンターに適合するための調整段階にあるほか、量産技術の確立を進めている。新たな製造法を採用するため、量産設備の設置についても検討を始めている。
LUNATONEはラベルやパッケージなどの熱に弱いフィルムにレーザープリンターで多品種印刷が可能になる。ペーパーレス化が進み、先行きのトナー使用量の減少傾向が見込まれるが、適用範囲の拡大で成長を確保する狙いもある。
日刊工業新聞2022年8月2日