コロナ感染回避も期待、北大などが大腸の内視鏡検査可否をLINEで10秒判定するAIシステム開発
北海道大学病院と大植病院(兵庫県朝来市)は、人工知能(AI)を活用したシステム「大腸カメラ前処置AI」を開発した。受検者の便をスマートフォンで撮影し、対話型アプリケーション「LINE」で画像を送ると、大腸の内視鏡検査ができる状態かAIが判定して結果を自動で返信する。受検者の負担を減らし、看護師の業務軽減や新型コロナウイルス感染リスクの回避も期待される。1年以内をめどに実用化を目指す。
大腸の内視鏡検査では肛門から内視鏡を挿入するが、前処置で大腸にある便や固形状の残渣(さ)をなくして大腸内腔を観察する。このため受検者が検査前に下剤を服用し、服用後の便性状を受検者や看護師が目視で繰り返し確認し、残渣がなく黄色透明になると内視鏡検査ができるようになる。
北大病院の光学医療診療部の小野尚子医師と消化器内科の松本将吾医師、大植病院の中村洪一医師のチームは、排便画像を機械学習させたAIを開発。これをLINEと連携することに成功した。受検者がLINEで便器水面の排便を撮影し、画像を送信するとAIが便性状を自動で判定。「前処置完了」か「前処置未完了」を判定し、それぞれの割合も併せてLINEに通知する。受検者は画像を送信後、数秒程度(最長10秒)で判定結果が受信でき、追加の下剤服用が必要なのか判断することができる。
国立がん研究センターによれば、2019年にがんと診断された中で最も多かったのが大腸がん。20年は約5万人が死亡している。中村医師は「受検者が自らの便を確認するという心理的負担を軽減し、大腸がんの早期発見につながる。看護師の業務も大幅に軽減できる」と期待する。
日刊工業新聞 2022年11月01日