海外売上高1兆円へ、大和ハウスが参入する新たな分野
大和ハウス工業は2026年度までの5年間で、海外事業の売上高を現在比2倍強の約1兆円の大台にのせる新中期経営計画を策定した。米国の住宅販売と中国のマンション開発が「収益の柱になる」(一木伸也取締役常務執行役員)とする一方、物流施設、データセンター(DC)の開発など新たな分野にも参入する。(大阪・池知恵)
大和ハウス工業は26年度に米国売上高を21年度比約2・7倍の7300億円に拡大を目指す。現在、収益の大部分を占めるのは戸建て住宅販売だが、芳井敬一社長は新中計発表会見で「今後、物流施設やDCの開発・建設にも新規参入する」意向を示した。
用地の選定はすでに始めており、「(物流、DCの)インダストリー分野は米国の全売上高の10%前後までもっていきたい」(一木取締役)方針だ。
米国の物流施設開発は、電子商取引(EC)市場の拡大を背景に追い風が吹いている。加えて米国は郊外の古い平屋倉庫が多く、「ラストワンマイルの物流に対応した都心部近郊への物流施設の再配置や、老朽化に伴う自動化、省力化のニーズが高まっている」(同)という。
同社は日本国内で物流施設の開発実績でトップを誇り、その技術やノウハウを米国にも積極展開していく。
世界最大のDC市場の北米では、グローバルにクラウドサービスを展開する企業からの需要が今後も底堅く、「現地、日本企業のニーズを取り込んでいく」(同)とした。
同社がもうひとつの注力市場と位置付ける中国では、上海近郊の長江エリアで26年度までに1000―2000戸の分譲マンション開発を新たに予定している。中国の購買層が「一人っ子政策世代」(同)となることから、「両親や祖父母から多額の資金援助を受け、中高級者層を中心に引き続き住宅需要が高い」(同)と分析する。
中国は足元では上海のロックダウン(都市封鎖)や、中国不動産大手の恒大集団の経営危機でマンション市場の冷え込みが懸念されている。
一方で中国政府は不動産購入を促す緩和政策や、住宅ローンなど中長期貸出金利を下げるといった対応を図っている。このため、「中長期的に需要が下がるとは想定していない」(同)とみて、中国にも積極的に投資を振り向ける。