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エーザイの創薬現場にインパクトを与えたAIの正体

AI・ロボットで変わる創薬現場 #04
エーザイの創薬現場にインパクトを与えたAIの正体

筑波研に導入した細胞培養ロボット「イチロー」が効率良く実験する(エーザイ提供)

エーザイの創薬現場にインパクトを与えたのがマウスの膨大な脳波データを読み込み、睡眠のステージを自動で判別する人工知能(AI)だ。自社で創製した不眠症治療薬「デエビゴ」の研究開発にも活用した。

脳波データをいったん画像に変換して深層学習に適用すると、「ノンレム睡眠」「レム睡眠」「覚醒状態」の3パターンに精度良く分けられた。熟練の研究者が3カ月かかる作業を数時間で完了したという。AIアルゴリズムを開発しただけでなく、実際に現場で使えるシステムに作り込んだことでAI導入の手応えをつかんだ。

高度なデータ解析を行う自社のデータサイエンティストと、実験者であるラボサイエンティストが日々議論しながら構築したことが奏功した。「外注せずに内製化したデータサイエンティスト集団が当社の強み」と筑波研究所長でチーフデータオフィサーの塚原克平上席執行役員は言う。

数年前から二つの領域を行き来できるハイブリッド人材の訓練プロジェクトを始めた。1年程度で高い能力を持つデータ人材が育つそうだ。数十人のプロ集団を率いる青島健データサイエンスヘッドは「データ駆動型創薬に向けて、データサイエンティストはより中心的な存在になっていく」と見通す。

最近、筑波研に細胞培養用のヒト型ロボット「イチロー」を導入した。軽量のため無人搬送車(AGV)に載せれば自動で動く。従来の実験は“職人技”で、精度や速さは人に依存していた。人とロボットが協働して昼夜問わず培養すれば、AIによるデータ解析で生まれた「仮説」を実験で検証するサイクルを効率良く回せる。

アルツハイマー病など神経科学領域の創薬で難しいのは、臨床試験の成功確率が上がらないこと。改善には正しい仮説に基づく薬づくりが必須だが、そのためにも仮説検証のスピード向上が欠かせない。「AIやロボットの活用で百発百中にしたい」(塚原上席執行役員)と夢は膨らむ。

日刊工業新聞 2022年9月26日

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AI・ロボットで変わる創薬現場
AI・ロボットで変わる創薬現場
新薬をつくる創薬の研究現場で人工知能(AI)やロボットの導入が進んでいます。医薬品の開発には十数年の期間を要し、その難易度やコストは上昇の一途をたどります。こうした中、国内の製薬大手はデジタル技術をどう活用し、創薬の成功率を高めていくのか。動向を追いました。

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