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田辺三菱製薬が創薬現場でAIを生かす四つの方針

AI・ロボットで変わる創薬現場 #05

田辺三菱製薬は大きく四つの方針で人工知能(AI)を創薬現場に導入している。創薬標的の見極めと化合物の創製・デザイン、化合物の評価、臨床時の薬効予測の四つで、医薬品を作る各段階でAIが活躍。創薬基盤研究所の斉藤隆太主席研究員は「人では気付けない結果にたどり着け、効率化と高速化も後押しする」とAI活用の利点を挙げる。

創薬標的では数多くの候補分子が出て来るため選択が難しいところ、AIで絞り込みができる。化合物の創製・デザインでは、たんぱく質の結晶構造の評価・最適化でAIを活用。数百人の研究員それぞれのノウハウを共有するのは不可能だったが、AIの学習を通して集合知とすることができた。化合物の評価では評価の高精度化と高速化のために画像解析を活用。臨床薬効予測では模擬実験により、患者の身体内で起こることを事前に理解できるようにする。

創薬から開発、医薬品が完成するまでの各段階をAIがカバー。既存の医薬品や開発中断品の活用にもつながっている。斉藤主席研究員は「一歩引いた視点で、創薬全体をいかに効率化するかの観点でAIを活用している」とポイントを挙げる。

AIを最大限に活用するため、生物学的な実験の「ウェット」とコンピューター解析の「ドライ」の両方を理解できる人材の育成に取り組んでいる。斉藤主席研究員は「実際に研究している人が自分たちの課題を解決できるのがAIを活用する上でベストの状況」と方針を示す。AIを扱える人材が増えることで技術革新も起きやすいとみている。また、創薬の各段階で個々に優れた技術を構築するだけでなく、それぞれが連動する形を取ることも重要だ。

全てを自社で行うには限界があるため、他の製薬会社とのデータ共有やAIベンチャーなど外部との連携にも力を入れる。人類の健康に寄与するという社会的な目標に共感する企業との連携が進めやすいという。

日刊工業新聞 2022年10月24日

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AI・ロボットで変わる創薬現場
AI・ロボットで変わる創薬現場
新薬をつくる創薬の研究現場で人工知能(AI)やロボットの導入が進んでいます。医薬品の開発には十数年の期間を要し、その難易度やコストは上昇の一途をたどります。こうした中、国内の製薬大手はデジタル技術をどう活用し、創薬の成功率を高めていくのか。動向を追いました。

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