おいしさを引き出す厚さ3.2ミリメートルの鉄鍋 自動車部品加工の技術結集
鉄製フライパンや鍋などの調理器具ブランド「Tetsu(テツ)」。厚さ3・2ミリメートルの鉄板が熱を蓄え、短時間で食材を焼き上げる。表面を窒化処理しているため、焦げ付きにくく、錆びにくい。この製品を手がけるのは、金属加工を行うナウ産業(神奈川県綾瀬市)だ。厚板プレス加工を得意とし、自動車部品や輸出用コンテナなどを生産している。
2015年に神奈川県綾瀬市が主催する中小メーカー向けBツーC(消費者向け)商品開発セミナーに参加し、自社製品開発をスタート。3年がかりで第1弾製品「Tetsu Nabe」を発売した。「(消費者向けに)『商品』を作る難しさを実感した」と今寿義社長は振り返る。加工痕が残らないよう磨いたり、持ち手の溶接面を斜めにしたりするなどデザインの美しさや使い心地を追求した。BツーC製品の製造を通じ「外観やデザインを重視する意識が社内に浸透した」(今社長)。
7月にはグリルプレート「Tetsu Grill」を発売した。家庭用魚焼きグリルに入るコンパクトさにこだわり、ふたをプレートとして使用することも可能だ。消費税込みの価格は2万6950円。
宣伝や売り方の工夫も重ねている。デザイナーのアドバイスを得ながら自社電子商取引(EC)サイトを作成。また、テツシリーズを使った料理レシピを交流サイト(SNS)に投稿するなどの取り組みを進めている。「BツーCは売り方が重要だと気付いた。得たノウハウをBツーB(企業間)製品にも横展開している」(今社長)。同社ではパレット用脚皿などのBツーB向け自社製品も販売しているが、同様にECを立ち上げたところ売り上げが向上した。
テツシリーズは累計約1500個を販売し、テレビドラマで使われるなど認知度も向上しつつある。日本貿易振興機構(ジェトロ)の支援を受け、22年中にアジア展開を予定している。