原発の構造設計を効率化するシステムの仕組み、清水建設が開発
清水建設はビルディング・インフォメーション・モデリング(BIM)を活用し、原子力発電所の構造設計を効率化するシステムを開発した。設備機器と建屋の干渉や構造部材の配置、配筋の検討といった一連の設計データを統合・連動。構造図や地震応答解析モデル、有限要素法(FEM)応力解析モデルも自動作成する。従来に比べ建屋の設計期間を約2カ月短縮できる。原発関連施設の新増設や改修での利用を想定する。工期短縮で電力会社に貢献する。
構造設計業務を統合した「NuDIS―BIM」は、原子炉メーカーが3次元(3D)で作成した機器配置計画を取り込み、BIM上で建屋の形状や放射線遮蔽(しゃへい)性能といった情報を反映した3Dモデルを生成。これを基に床や柱、梁の配置や大きさなど構造計画の妥当性を判断したり、設備と躯体の干渉を検証したりしてBIMモデルの形状を確定する。
その上で、このデータを解析用の3Dモデルに自動で変換。地震応答解析やFEM応力解析を通じて建屋の構造上の安全性を検証する。これらの解析結果から必要な鉄筋の本数などを算出。部材断面の情報として反映させ、建屋の構造BIMモデルを仕上げる。このモデルからは平面図や断面図、配筋リストなどを出力できる。施工や維持管理業務への適用も検討する。
原子炉建屋やタービン建屋など原発関連施設の構造設計業務は、構造技術者の知見に頼る部分が多い。このため、データ入力やヒューマンエラーを防ぐためのチェックに膨大な時間と手間を要するのが現状だ。また、原発建屋には巨大で複雑な形状の部材が多く使われる半面で、その設計データが連動していないほか、2次元の設計データでやりとりしている課題もあった。
清水建設は原子炉建屋としては、日本原子力発電の東海発電所や東京電力の福島第二原子力発電所の4号機、柏崎刈羽原子力発電所4号機・7号機などを手がけ、タービン建屋も複数の実績がある。