【ディープテックを追え】植物由来の材料で培養肉の価格低減

#85 NUプロティン

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肉の可食部を細胞から作る培養肉。国内外のスタートアップが研究を進める。ただ、普及には細胞培養のコストダウンが不可欠だ。名古屋大学発スタートアップのNUプロティン(徳島市昭和町)は植物由来の原料で、高価格のたんぱく質の置き換えを狙う。

培養肉は細胞に増殖を促す「成長因子」などを加え培養して製造する。現在広く使われる成長因子は動物などから取得するため高額だ。

2013年に初めて試食会が開かれた培養肉バーガーのパテの製造コストは、1つ33万ドルだった。直近では、設備の大型化や参入企業の増加によって培養肉の価格は下落してきた。オランダの培養肉スタートアップ、モサミートやイスラエルのフューチャーミートなどは、規模の拡大によって価格低減に取り組む。それでも価格を下げるには、細胞培養のコストを下げる必要がある。

植物由来で価格低減

同社の製品

NUプロティンは小麦胚芽由来の抽出エキスで、成長因子を増やす。製粉所から出る副産物を利用することで従来よりも培養のコストダウンを図る。仕組みはこうだ。まず成長因子のデオキシリボ核酸(DNA)からPCRの増幅を通じて、メッセンジャーRNA(mRNA)を作る。このmRNAを小麦胚芽の抽出エキスなどで作った溶液内で、培養して増やす。同社によれば10時間程度でエキスの中に成長因子が生成されるという。1リットルの成長因子入りの溶液であれば、1万リットルのリアクターに投入できる。それを3~4週間培養すれば、500キログラムの培養肉を得ることができる。従来は小麦胚芽に含まれる「トリチン」と呼ばれる物質がたんぱく質合成を阻害するため、たんぱく質合成を行うことは困難とされてきた。このため専用の農場で生産するトリチンを含まない小麦胚芽を使うのが一般的だった。同社は通常の小麦胚芽を独自技術で抽出することで価格を抑えた。

将来はオンサイトで

南社長

将来は培養肉メーカーの拠点内に成長因子を作る「オンサイト」での活用を目指す。南賢尚社長は「オンサイトで利用できればコスト面だけでなく、迅速に必要な分の成長因子を確保できるなどの利点もある」と強調する。同社は技術をライセンスアウトし、培養肉メーカーからプロフィットシェアを受ける計画だ。23年にはメーカー3社のパイロットプランに向けて技術提供を行う予定だ。

また、小麦の製粉過程から出る副産物を原料にするため、製粉所の近くに抽出エキスを製造することも視野に入れる。培養肉のプレーヤーが多い、北米での「地産地消」モデルを築くことでトータルのコストダウンを目指す。

細胞培養に必要な成長因子を安価に作れることから、創業当時は医療分野での応用を目指していた。ただ、「医療は製造の安定性や安全性の観点から、スタートアップが切り込むにはハードルが高かった」(南社長)。そこで市場の伸びが期待できる培養肉へシフトチェンジした。英バークレー銀行によれば、培養肉などの代替肉の市場は30年までに約14兆円になると予想される。同社もそのころまでに15社ほどへ技術提供、売上で420億円を目指す。培養肉市場の拡大に合わせた、事業拡大の機会を狙う。

この連載では、「ディープテック」と呼ばれる先端テクノロジーの事業化を目指す企業を掲載します。
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