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収益構造を改善する味の素、重視する財務指標

収益構造を改善する味の素、重視する財務指標

西井 孝明社長

調味料や冷凍食品などの食品事業、アミノ酸を軸としたヘルスサイエンスや電子材料など、事業分野が多岐にわたる味の素。2025年度を最終年度とする中期経営計画で、20―22年度の2年間をフェーズ1と位置付け、構造改革による収益構造の改善を進めている。投下資本利益率(ROIC)を重点指標に、不採算事業のアセットライトを進めることで収益性を改善し、キャッシュフロー(CF)の創出力を高める狙いだ。

収益性や成長性などを見据え、重点事業としたのは「調味料」「栄養・食品」「冷凍食品」「S&I(加工用調味料)」「ヘルスケア」「電子材料」の6事業。ここに経営資源を集中し、「フェーズ1では食と健康のエコシステム作りに投資し、23―25年度のフェーズ2ではこれを基盤に100億円規模のパーソナル健康の新事業モデルを構築する」(西井孝明社長)と成長戦略を描く。オーガニック成長率5%を掲げて全体を底上げし、20年3月期に3%だったROICを23年3月期に8%、26年3月期に11%、31年3月期に13%超とすることを目指している。

重点指標とするROICは、分子となる利益を上げるとともに、分母となる投下資本を下げる必要もあるため、この分母を減らす策として、非重点事業のアセットライト化を推進する。この一環として、21年2月に欧州で飼料用アミノ酸事業を展開する味の素アニマル・ニュートリション・グループを売却した。同事業は味の素の収益を支える事業の一つだったが、近年、中国や韓国の企業が参入し、価格競争に陥り収益性が落ちていた。

岡三証券投資調査部の住母家(すもげ)学アナリストは味の素の戦略を「ROICによる経営管理の効果で、キャッシュ創出力が高まっている」と評価する。営業CFは20年3月期は1148億円だったが、21年3月期は1656億円、22年3月期は1630億円を見込む。西井社長は「21年3月期―23年3月期に4000億円超のキャッシュインを見込む」としており、財務状況の大幅な改善を図り、次の成長につなげたい考えだ。

日刊工業新聞2022年2月3日

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