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ウクライナ侵攻で世界の「小麦供給」に差す影

ウクライナ侵攻で世界の「小麦供給」に差す影

小麦不足の懸念が高まっている

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が世界の小麦供給に影響を与えている。ロシアとウクライナは世界有数の小麦輸出国で、今後の情勢悪化により生産や輸出の減少が危惧されている。日本は主に北米や豪州から小麦を輸入しているため足元では直接的な影響を受けていないが、世界的な小麦不足が生じると需給逼迫(ひっぱく)や価格上昇の余波を受ける可能性が指摘されている。(森下晃行)

中東・アフリカ 短期的な不足懸念

世界銀行(世銀)によると、ロシアによる軍事侵攻でウクライナの小麦輸出が滞っており、レバノンやチュニジア、パキスタンなどの国々が短期的に小麦不足に見舞われる可能性があるという。

国連食糧農業機関(FAO)によると、ロシアとウクライナの小麦供給量は世界全体の14%を占める。品質は米国産などに劣るものの、価格の安さから中東やアフリカが多くを輸入している。

ウクライナ情勢の悪化により、世界では仕入れ先の見直しが始まっている。輸入小麦の約60%をロシアから仕入れているエジプトは2月にルーマニアからも輸入を始めた。

日本 米豪から調達も高騰警戒

日本では北米の不作などを要因に小麦価格が上昇。「製粉会社が前倒しで買っており、取扱量が増えている」(千葉共同サイロ〈千葉市美浜区〉)という声に加え、ウクライナ情勢の悪化が続き世界全体の小麦不足が加速すると「さらなる価格上昇などの間接的な影響が日本にも及ぶ可能性がある」と日本貿易振興機構(ジェトロ)海外調査部の浅元薫哉課長代理は指摘する。

リスクは他にもある。「ロシアは世界に多くの肥料原料を供給している。特にリンは中国の輸出が停まっており、この状況が続くと世界の穀物生産量が大きく減少する可能性がある」と大手総合商社は危惧する。今後も「世界的に穀物需給がタイトになる可能性が高く、相場の高騰やさらなる上昇が予想される」という。FAOはウクライナ情勢により世界の食料・飼料価格が最大約20%上昇する可能性があるとの予測を発表しており、世界的な影響の波及が懸念される

日刊工業新聞 2022年3月23日

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