オリンパス科学事業承継の新会社、営業利益率10%以上へ社長の展望
ソリューション型へ転換
オリンパスは科学事業を承継する新会社で、中長期で売上高成長率5―6%、営業利益率10%以上を維持する方針だ。2022年3月期の科学事業の業績は、コロナ禍からの回復と販管費の抑制でいずれも達成できる見通し。今後も成長を持続させるために研究開発費には売上高の10%強を充てていく。加えてデータやクラウドサービスを活用したソリューションビジネスへ転換し、収益力を高める。科学事業に適した経営体制に変革する。
オリンパスは生物顕微鏡や工業用内視鏡などを手がける科学事業を新設した完全子会社のエビデント(長野県辰野町)に4月1日付で承継させることで分社化する。社員や開発・生産、営業拠点はエビデントがそのまま引き継ぐ。
今後はオリンパス本体から独立し、自律的に経営を行う。データやクラウドを活用したサービスを拡充し、これまでのモノ売り中心のビジネスモデルを顧客の課題解決型へシフトする。また、アジャイル型の製品開発、オープンイノベーションによる協業なども推進し、製品の展開スピードや収益力を高める。
オリンパスは内視鏡、治療機器などを手がける医療事業に経営資源を集中させる。竹内康雄社長は「これまで科学事業の利益の一部を医療事業に投資していたため、科学事業を独立採算で経営できるようにしたかった」と分社化の狙いを話す。
同社は21年1月にデジタルカメラなどの映像事業を売却しており、エビデントについても全株式を第三者に譲渡することを念頭に置いている。
インタビュー/オリンパス執行役員・斉藤吉毅氏 柔軟で迅速に意思決定
新会社エビデントの社長に就任したオリンパス科学事業担当役員の斉藤吉毅執行役員に今後の方針を聞いた。(石川雅基)
―独立することで経営方針、製品展開はどう変わりますか。
「科学事業はこれまで安全を最優先する医療事業と同じ目線で品質保証などをしてきたため、製品の開発や展開に時間を要していた。今後は柔軟で迅速な意思決定ができる組織体制を構築する。製品開発ではアジャイル型を取り入れ、リスクを取ってでも展開スピードを高めたい。また、医療事業は自前主義の意識があったが、今後はオープンイノベーションを推進する。4月の分社化によって企業名は変わるが、製品のブランドや従業員の待遇、勤務地などが変更になることはない」
―新会社で目指すビジネスモデルは。
「既存の製品を単に売るのではなく、検査・研究のワークフロー全体に最適なソリューションを提供するテーラーメイド型のビジネスモデルを目指す。それを実現するために研究開発費を上積みしたい」
―ライフサイエンスではクラウドの新サービスを始めました。
「観察機器から取得した研究データや実験条件などの情報を一元管理でき、ワークフローの効率性を高められる。まだ利用できる観察機器は2製品のみだが、将来は全ての機器で利用できるようにしたい。他社の製品、ソフトウエアともつなげたい」