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世界トップ3の背中追う、日本ペイントHDのM&A戦略

日本ペイントホールディングス(HD)は2021年1月にシンガポール投資会社ウットラムグループの出資が58・7%に引き上げられて以降、海外塗料メーカーの買収を加速している。フランスのクロモロジーを22年1月に買収したほか、スロベニアのユブを同年前半に買収する決定をした。

低金利に加え21年1月にウットラムへ実施した第三者割当増資などで、M&A(合併・買収)資金を確保しやすい環境が整った。経営の手堅い建築関連の塗料メーカーを中心に傘下に収め、事業の手薄な欧米も含め世界のトップクラスを目指す。

日ペHDは21年、まず1月にウットラムから塗料のアジア合弁事業とウットラムのインドネシア事業を買収。3月にマレーシアの封止材など塗料周辺商品メーカーのバイタル・テクニカルを子会社化した。その後も欧州4位の建築用塗料メーカーのクロモロジー、同塗料で中・東欧で広い販路を握るユブと、子会社化を立て続けに決めた。傘下企業の拡大により、23年12月期に売上高1兆1000億円を目指す。

日ペHDの強みは、ウットラムとの協力で築いてきたアジア最大の塗料メーカーとしての規模やブランド力。これを求心力に各地で塗料企業を買収し、収益力の高いグループを築こうとする。若月雄一郎共同社長は「買収先の経営を成功させ、グループ企業を増やしたい」と意欲を示す。

クロモロジーとユブの買収資金は金融機関から借り入れる。増資などで自己資本が増え借り入れ余力が強まったのも、グループ拡大の追い風になる。

M&Aの見極めは経営の実態や業種・地域の成長性などになる。業種でみると自動車用塗料は世界的な景気変動にさらされやすい。このため投資先は、コロナ禍でも地域で堅実な需要を見込める建築関連が目立つ。

米シャーウイン・ウィリアムズなど塗料上位3社はそれぞれ世界シェア10%前後。欧米メーカーも盛んにM&Aを繰り広げている。日ペHDは同4%で、3社の背中はまだ遠い。投資の安全性や効率を熟慮しながら、3社に迫ろうとリスクを取る局面が今後も予想される。

日刊工業新聞2022年2月3日

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