総務省地方局が発掘へ、“近畿発”5Gサービスの中身
情報通信関連の行政を所轄する総務省の地方支分部局として近畿2府4県を管轄するのが近畿総合通信局だ。岸田文雄首相が肝いり施策の一つに掲げる「デジタル田園都市国家構想」の加速に向けては、強固なICT(情報通信技術)基盤の構築や第5世代通信(5G)、デジタル変革(DX)の普及が欠かせない。
地域におけるこうした課題解決に向けて近畿総合通信局はローカル5Gの活用や導入促進などに取り組んでいる。その上で渕江淳局長は「“近畿発”としての5Gのサービス開発ができれば」と意気込む。5Gの両輪となるのはインフラとサービス。「これから課題となるのはサービス。地方局として発掘するのが仕事になる」と渕江局長は説明する。
ローカル5Gについての情報共有や知識浸透による機運醸成、活用に向けた案件づくりの支援などを目的とした「近畿ローカル5G推進フォーラム」は2020年7月から実施している。具体的なローカル5Gの活用事例紹介や総務省の取り組み説明、自治体など行政とICT関連企業をつなぐ場としても機能し、これまでにリアル、オンラインを含めて計6回の会合を開いてきた。
渕江局長は「最近は参加者から『初期費用や維持管理費はどのくらいか』など、具体的な質問が増えてきた。身近なものとして取り入れる契機になれば」と手応えをつかむ。近畿総合通信局は近畿農政局とも連携する。スマート農業を推進する農政局とローカル5G普及を掛け合わせた取り組みを目指したオンライン会合を開いた。
近畿ならではの5Gサービスについて渕江局長は「観光支援が魅力発信の一つ」と話す。奈良市の平城宮跡歴史公園の一角に「復原遣唐使船」が展示されている。これを生かした付加価値創出で「海外観光客は展示物を見ても実感しにくい。ローカル5Gによる複合現実(MR)グラスを活用した映像を見れば歴史的な背景も分かる」(渕江局長)とNECなどが中心となり、2月に実施された観光体験をサポートした。
コロナ禍でインバウンド(訪日外国人)需要は霧散したが、25年の「大阪・関西万博」を見据え、近畿総合通信局もこうしたローカル5G活用の仕掛けづくりを強化したい考えだ。観光以外にスポーツなどのコンテンツも対象になる。渕江局長が「5G活用で魅力向上につながることへの気付きを提供したい」と力を込めるように、近畿総合通信局の今後の支援の幅もさらに広がりを見せそうだ。(編集委員・林武志)(水曜日に掲載)