「社会科見学」バーチャルで受け入れ、いすゞが練った小学生を飽きさせない工夫
いすゞ自動車が、バーチャルで小学校の社会科見学の“受け入れ”を始めた。企業博物館と小学校をオンラインで結びリアルタイムで質問に答えたり、事前収録した工場の動画を織り込んだりして、児童を飽きさせないよう工夫した。コロナ禍で教育現場ではリアルな校外学習が難しい状況。いすゞは小学校側との密なコミュニケーションを図り、社会科見学を望む声にバーチャルで応えた。(日下宗大)
「トラックは何台生産していますか」、「工場にはロボットは何台ありますか」、さらには「いすゞのテレビCM曲は誰が作ったのですか」―。
工場内を映した動画を見た後、小学5年生の児童から多くの質問が挙がる。あらゆる疑問に、オンラインでつながった先のいすゞの説明員がテキパキと答える。
同社は2021年9月からバーチャル社会科見学の提供を始めた。コロナ禍の影響でリアルな見学が難しい中、小学校の教諭から児童の学習機会を提供してほしいといった声が寄せられていた。
コロナ禍前は企業博物館「いすゞプラザ」(神奈川県藤沢市)で年間約100校の社会科見学を受け入れてきた。藤沢工場(同)内もセットで見学できて好評だった。
バーチャル社会科見学を開始するまでに、藤沢市近郊の3校と相談して授業内容を練り上げた。学校側からは「座学なので飽きさせない工夫を」「従業員の声を聞けないか」といった要望が出た。実際の授業ではミニクイズコーナーを設けたり、動画に従業員のコメントを入れたりして、児童の興味が続くようにした。
オンラインならではのトラブルを防ぐためにも入念な準備が必要だ。「苦労するのは通信環境だ」といすゞの富士原昇サステナビリティ推進部シニアエキスパートは話す。小学校によって通信環境のレベルが違うからだ。通信トラブルが起こると授業自体が成立しなくなる。学校側との準備作業は授業の直前だけでなく、1週間前も行う。
バーチャル社会科見学は小学校と同社との物理的な距離を気にしないでできる。同社は今後、近隣だけでなく、全国の小学校からの要望にも応える考えだ。「リアルな社会科見学が再開された後もバーチャル社会科見学を併行して開催し、多くの子どもたちに見聞を広める場を提供したい」と富士原シニアエキスパートは力を込める。