日用品の容器包装に新局面、環境負荷低減へメーカーが急ぐ技術革新と回収の仕組み作り
日用品の容器包装をめぐる環境負荷低減の取り組みが新たな局面を迎えている。日本石鹸洗剤工業会によると、容器包装に使う樹脂使用量の2020年実績は製品出荷量当たりの原単位で95年比42%減。削減率42%の目標は辛くも達成したが、頭打ちの状態。4月には環境に配慮した商品設計などを促す「プラスチック資源循環促進法」が施行される。メーカー各社はリサイクルを加速する技術革新と回収の仕組みづくりを急いでいる。(縄岡正英)
日用品各社はプラスチック使用量の削減を軸に、本体容器に詰め替え・付け替えて使うパックの展開を進めてきた。採用は広がり、全製品出荷量に占める比率は81%となり、樹脂使用量の削減に大きく寄与した。だが、その“優等生”もここ数年、全体として「伸びが鈍化している」(上山健一石鹸洗剤工業会環境委員長)。
そこで日用品各社が力を入れるのがリサイクルだ。容器、同パックについて再生しやすい素材開発・設計に加え、回収の仕組みづくりを進めている。とはいえ、使い切るまで中身を保護する必要のある日用品の容器包装には材質が問われる。さらに廃棄していた容器包装を回収・再生するには、消費者に理解してもらい、生活習慣を変えてもらうことが肝要。「それには時間がかかる」と各社の担当者は口をそろえる。
競合先はもちろん、自治体や小売りなど異業種と連携して取り組むことも欠かせない。日用品業界としてプラスチック使用量そのものの削減を先行したのもそのため。だが削減率が高止まる中、現状は待ったなしの状況と言っても過言でない。
連携の輪は広がっている。花王とライオンは協働で、20年10月から一部小売店の協力を得て使用済み詰め替えパックを回収する実証実験を始めたほか、一部薬局でも回収を進めている。神戸市では21年9月から花王、ライオン、アース製薬といった日用品メーカーや流通など16社が連携し使用済み詰め替えパックの回収、水平リサイクルを目指している。
ただ、内容物を温度や湿度から守る多層フィルム構造の詰め替えパックを再生するのは容易ではない。ポリエチレンなど溶融温度が異なる複数素材をまとめてフィルムに再加工すると、溶けきれなかった部分に穴が開く。だからといって高温で溶かすと素材の機能が低下してしまう。
そこで花王は、回収した詰め替えパックの中から、ポリエチレンだけを取り出す技術をテストプラントで実証中。さらに、次のステップとして、より再生しやすい単一素材とすることで、フィルムからフィルムへの「水平リサイクル」をしやすくしようとしている。
石鹸洗剤工業会が第4次自主行動計画で掲げた削減目標は30年までに95年比42%以上。第3次計画の目標を維持するだけでも容易ではないことを物語っている。「中身で競り合う一方、容器包装は一部でも再生しやすいように工夫してはどうだろうか」―。日用品メーカーからは、そんな声さえ聞こえてくる。