川崎重工は大気から直接回収、「CO2活用」設備開発に挑む重工大手の戦略
重工大手2社が二酸化炭素(CO2)を転換利用する「カーボンリサイクル」に必要な設備を開発する。川崎重工業は大気からCO2を直接回収するシステムを実用化する。IHIは水素とCO2からメタンを生成するメタネーションの装置を社会実装に向けて大型化し、2030年をめどに生成量を1時間当たり数万ノルマル立方メートルに増やす。水素やアンモニアの燃料としての利用に続き、CO2対策のインフラ整備が進みそうだ。
川重は環境省の事業により明石工場(兵庫県明石市)で、CO2回収システムを2022年3月まで実証する。1日5キログラムのCO2を分離回収することを目指す。これまでに同500グラムを回収する小型機で試験を行ってきた。CO2の固体吸収材を活用することで、従来の方式よりも分離回収の省エネルギー化につながるとしている。設置場所を自由に選べることから、コスト面の課題を解消しながら早期に実用化する。
IHIはメタネーション装置のメタン合成量を段階的に増やす。生成量が1時間当たり12・5ノルマル立方メートルの試験が完了した。CO2を転換利用するために同装置の需要が見込まれており、メタンの用途の一つとして都市ガスの導管への供給を想定している。政府も50年にかけて、合成メタンの導管への注入量を増やす方針だ。
カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)に向け、CO2の排出対策の重要性が増している。重工大手では三菱重工業もCO2の回収プラントを展開するとともに、液化CO2運搬船の開発を進めている。次世代エネルギーとして有力視される水素やアンモニアへの燃料転換が加速する一方、CO2の回収から貯留、転換利用までのインフラ構築の需要も高まる見通し。川重とIHIはカーボンリサイクル向け設備の事業化を目指す。