岩谷産業が北米で産業ガス販売参入へ、その全容は?
岩谷産業は2023年度末までに北米で産業ガス販売事業に参入する。19年に買収した特殊ガス子会社の顧客・情報網を活用。現地法人の米国岩谷が主体となりヘリウムや半導体ガスなどの特殊ガスから販売を始める。産業ガスはアジアでも規模を拡大中。海外事業の成長で23年度産業ガス・機械事業の売上高目標2093億円(20年度比21・6%増)の達成に弾みを付ける。
北米は産業ガス最大市場の一つ。岩谷産業は北米からヘリウムを調達しているが、販売は19年に買収した米アドバンスド・スペシャルティー・ガシズ(ASG、ネバダ州)による冷媒ガスや半導体ガスといった特殊ガス事業があるのみ。酸素や窒素など空気分離ガスはメジャー企業が先行していることもあり、北米の水素事業を担う米国岩谷を主体として、ヘリウムや特殊ガスから販売事業に本格参入する。
事業の核となるガス充填・販売の拠点「ヘリウムセンター」の新設を検討する。燃料電池車(FCV)向けステーションの増設や製造・供給への参入を進める水素事業とともに、産業ガスを北米事業の成長の柱としたい考え。
岩谷産業の21年3月期の売上高に占める海外比率は約15%で、産業ガスに占める海外比率は約25%。海外産業ガス事業は半導体、電子部品、自動車などの工場の増強・増設に合わせて適地を選び、製造・供給体制を構築する方法で、中国、東南アジアなどで事業拡大を進めてきた。
ヘリウムセンターは11月にタイで新設したほか、23年度末までに中国で現在の1カ所を2―3カ所に増やす計画。マレーシアも増強を検討している。産業ガスプラントの増設を含むLPガスや産業ガス関連の成長投資は21―23年度に500億円を計画している。
日刊工業新聞2021年12月24日