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ガソリンスタンドの跡地に無条件で水素ステーションを!水素にかける岩谷産業の思い

牧野明次会長インタビュー

わが国が2050年の脱炭素社会の実現に向けカジをきる中、燃やしても二酸化炭素(CO2)を出さない水素の活用に注目が集まる。水素に80年前から関わる岩谷産業は、トヨタ自動車三井住友フィナンシャルグループとともに共同代表として「水素バリューチェーン推進協議会」を20年12月に設立した。「日本で水素社会を作る」と言い続けてきた岩谷の牧野明次会長に思いを聞いた。

―水素バリューチェーン推進協議会が発足した意義は。

「日本で脱炭素化を図るには、水素を重要エネルギーと位置付け、どんどん社会実装することが必要だ。13年から続ける経済人らによる水素の勉強会メンバーを中心に水素社会に一緒に取り組もうと、協議会が発足した。共同会長はトヨタ自動車の内山田竹志会長、三井住友フィナンシャルグループの國部毅会長、そして言い出しっぺの私も加わり、3人の共同代表となった。幅広い業界の88社で発足し現在は自治体や大学も入り195社・団体が参加する」

―早速、国に提言をしました。

「菅義偉首相が2050年のCO2フリー宣言をされ、国の戦略で30年に現状比300倍の水素導入目標も示された。ただ導入量に加え、価格も下げないと普及しない。目標達成には民間の取り組みだけでなく国の支援や制度設計は不可欠だ」

―規制緩和で具体的に要望したいことは。

「水素ステーションを整備・運営する当社の立場でいうと、土地確保が一番困っている。燃料電池(FC)トラックやバスにも対応した大型のステーション建設では1000平方メートル規模が必要。大きな国道沿いでそれを探すのは至難の業だ。ガソリンスタンドの跡地に無条件でステーションを建てられるようになれば大きい。水素ステーションを多く整備しないと燃料電池車の普及につながらない」

―改めて岩谷として水素の取り組みは。

「当社は水素の普及へ、国内で生産体制や水素ステーションを拡充し、海外でも調達網を作り価格を下げる努力をする。当社だけでなく、志ある仲間と一緒にやりたい。それが水素バリューチェーン推進協議会の精神だ」

記者の目/牧野会長の思い、日本動かす

岩谷産業の水素事業へのこだわりは、創業者・岩谷直治氏の思いを引き継いでいることが大きい。脱炭素化という社会の大きな流れで、牧野会長の「自分がやらないと誰がやる」という執念が、多くの有力企業、国を動かしている。水素分野で日本がリードできるか、水素バリューチェーン推進協議会の果たす役割に期待したい。(大阪編集委員・広瀬友彦)
日刊工業新聞2020年3月22日

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