今の時代、万博は必要? ドバイ万博日本館クリエイティブ・アドバイザーに聞く

パノラマティクス・齋藤氏 × POOL INC・小西氏

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ドバイ万博日本館(2020年ドバイ国際博覧会日本館 提供)

10月にUAE(アラブ首長国連邦)のドバイで「2020年ドバイ国際博覧会」(以下、ドバイ万博)が開幕した。本来は2020年に開催予定だったが、新型コロナウィルス感染症の影響により1年延期された。192カ国以上の参加国の中でも、日本館は好評を博しているという。

ドバイ万博日本館のテーマは「Where ideas meet(アイディアの出会い)」。このテーマはどのように形成され、2025年の大阪・関西万博にどう繋いでいくのか。そもそも今、なぜ万博が必要なのか。ドバイ万博日本館クリエイティブ・アドバイザーの齋藤精一氏(写真左 以下、齋藤)と、小西利行氏(同右 以下、小西)による対談でこれらの問いについて語ってもらった。

-両氏はドバイ万博日本館の基本計画や指針づくりなどのアドバイス・提案をされています。才能あるクリエイターの登用にも尽力されました。

小西 1970年の大阪万博を振り返ると、日本企業のパビリオンを設計した黒川紀章氏は当時30代、ユニフォームをデザインしたコシノジュンコ氏も20代と若かった。大阪万博を足がかりとして、彼らは国内外で活躍の場を広げていきました。ドバイ万博でも、若い才能が世界へ羽ばたく機会になればいいと思いました。

齋藤  そうですね。基本計画の段階から、若いクリエイターたちの才能を世界に知らしめるチャンスにしたい、と合意しました。大阪・関西万博や、将来に繋げる布石にもなります。

万博を「必要あるもの」とするために

-日本は2025年の万博開催国ですが、費用対効果などを考えると「万博は本当に必要なのか?」という声もあります。

小西 そういった意見もありますが、あらためて「万博の意義とは何か」ということを問いかけていきたいと思います。万博は世界各国が現状の課題を認識して、解決に向かって話し合うことができる機会です。「万博はいるのか」という議論ではなく、万博を「必要あるもの」にするためのアイディアを集めるべきだと思います。21世紀の万博は、参加国がテクノロジーなどの国力を誇示する従来の〝国威発揚型〟から、地球全体でみる〝課題解決型〟に移行しました。こうした世界各国が一カ所に知恵を持ち寄る場は、ほかに少ないと思います。

齋藤 小西さんの言うとおり、万博は各国が課題に向き合って話し合ったり、データを集めたり、それらを有効活用する場所だということが認識されていないのかもしれません。

齋藤 そのような議論が生じたのは、万博がテーマパーク化してしまったからではないでしょうか。本来、万博は文化圏も気候も違う人同士がソリューションを集めて、刺激を与え合う場所です。経済効果だけでなく、世界のイノベーションが国を挙げて一気に集まり、互いに近い距離で見ることができる点に価値があります。みんなで世界を考える場所です。

「万博は文化圏も気候も違う人々同士がソリューションを集めて、刺激を与え合う場所」と齋藤精一氏。

-こうした場の一つが、「アイディアの出会い」をテーマとして発信する日本館ですね。

齋藤 そうです。日本は古来から様々なアイディアが出会い、外国からの知恵や文化を吸収しながら進化してきました。そして現在は、災害、少子高齢化、格差社会など「課題先進国」。こうした日本の姿を反映しました。さらに日本がこれから、課題をどう克服しようとしているのかを発信し、自分たちも真似してみようと思う国、企業、人はどんどん真似してもらっていいと思います。

小西 館内を進むにつれ「何これ、こんなに問題があるんだ」「なんとかしないといけない」と感じ、最終的に「どうしたらいいの?」と意識が変容していく。この流れは、指針の中で重要視していた、Join(参加)、Sync(共鳴)、Act(行動)の3つのキーワードにつながります。来館者はこれらを体感し、社会課題を〝自分ゴト化〟する。課題に対して「何かできるかもしれない」と思っていただけたら成功です。

「社会課題を『自分ゴト化』し、『何かできるかもしれない』と思っていただけたら成功です」と小西利行氏。

齋藤 万博は楽しくワイワイするだけの場所であってはいけないと思います。多様なアイデアを出会わせることで、世の中の課題を認識して共通化させることができます。知的レベルが上がる場所なのです。テーマパークとしてではなく、もう少し真剣に取り組んでいくべきだと思います。大阪・関西万博では、主催国である日本がガイドラインを作成し、万博の本来の意義を伝えた上で参加を募る形でも良いのではないでしょうか。

小西 ドバイ万博日本館は、テーマパーク的ではない本来の万博の形に近づけています。日本館が人気になれば、それは間違っていないということになります。そうしたら、他国のパビリオンも社会課題について考えさせるような展示に変わるかもしれません。今回、日本館で打ち出した方向性は、大阪・関西万博でも継承していきたいと考えています。

「B面」をあえて見せた日本館の面白さ

 

齋藤 ドバイ万博日本館は、色々なアイデアを集めて紡ぎ、問題を把握する段階です。ポジティブだけでなく、ネガティブな面も見せている点が新しいと思います。アナログレコードでいうと、A面がキラキラとした表側だとしたら、B面は課題山積みの裏側です。日本館はあえてB面も見せました。そのB面がいつかA面に変わる可能性を秘めているのが、日本館の素晴らしさだと思います。そして大阪・関西万博は、未来へ向けて実践するフェーズであるべきです。

-ネガティブな面を見せながらも、皆のアイディアや知恵を結集すれば、課題はいつか乗り越えられると示唆している訳ですね。

齋藤 綺麗事のように思われるかもしれませんが、課題は新たなビジネスの種にもなります。そう考えれば、楽しくなりませんか。万博を機に課題先進国である日本の取り組みが認識され、広がることで、世界が少しでも良い方向に向かうのではないかと考えています。

小西 今を生きる人々は、世界にはネガティブな面があることを皆知っています。万博は、「世界がこうなる」という事実のみを提示するのではなく、解決方法を示すことに意義があるのではないでしょうか。万博はキラキラしたものだけを見せる場所ではありません。万博に批判的な人にこそ、大きな変化を与えたいです。

小西 万博が課題解決型だからといって、もちろんすぐに答えが出るものではなく、時間の経過が必要です。その中で、課題解決に向けて自分がいかに行動していくか。特に若い世代の人々がそれを考えていただけたら嬉しいです。従来の万博は、期間が過ぎれば終わりでしたが、「循環 JUNKAN -Where ideas meet-」 のウェブサイトは、万博を生き長らえさせるツールとして画期的です。多様な課題や解決法がどんどん集積されていく。そして2025年に、その答え合わせができるような存在です。ぜひ、多くの人に参加いただきたいです。

齋藤精一(さいとう・せいいち) アブストラクトエンジン代表取締役 パノラマティクス主宰 米コロンビア大学大学院で建築デザインを学び、2000年から米国で活動を開始。2006年(株)ライゾマティクス(現:(株)アブストラクトエンジン)を設立。行政や企業などの企画、実装アドバイザーを数多く行う。ドバイ万博日本館クリエイティブ・アドバイザー、2025年大阪・関西万博People’s Living Labクリエイターを務める。
小西利行(こにし・としゆき) POOL代表取締役 コピーライター/クリエイティブ・ディレクター 大阪大学を卒業後、博報堂入社。2006年POOL INCを設立。「VISION CREATIVE」を掲げ、長期的な視点で広告制作、PRディレクションからプロダクトデザイン、ホテル・商業開発まで手がける。ドバイ万博日本館ではコピーライティング分野のクリエイティブ・アドバイザーに就任し、テーマ・ビジョンづくりなどに参画した。

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