大阪・関西万博で採用へ。エネルギーを使わずに表面温度を下げられる新素材の正体
大阪ガスは、2025年大阪・関西万博の会場予定地である夢洲(大阪市此花区)などで、エネルギーを使わずに周囲より表面温度を下げられる新素材「SPACECOOL」の実証実験を始めたと発表した。トラックの荷台、テント、分電盤ボックスなどの外装に同素材を施工し、直射日光下での冷却性能を評価する。実験の成果を踏まえて、万博会場のパビリオンなどでの採用を目指す。
新素材は放射冷却現象によりエネルギーを使わずに素材表面温度を外気温より最大約6度C下げられる。大ガスの出資先SPACECOOL(東京都港区)の末光真大テクニカル本部長は「万博会場の採用で新素材の市場形成を進め、早期の事業化につなげたい」との抱負を示した。
出典:日刊工業新聞2021年8月27日
新素材「SPACECOOL」の原理とは?
出典:日刊工業新聞2020年7月20日
大阪ガスは放射冷却の原理を利用し、直射日光下でもエネルギーを使わず温度を低下できる新素材「SPACECOOL(スペースクール)」を開発した。独自の光学制御技術を用い、太陽光の入熱よりも赤外線放射の出熱を多くする材料設計を行った。中国企業で類似素材はあるが、大ガスは自社実験で外気温より最大約5度C低くなる世界最高レベルの冷却性能を確認済み。同素材を使ったフィルムと帆布のサンプル提供を月内に始める。
放射冷却は、地球上の熱が「熱ふく射」と呼ぶ電磁波(光)の形で宇宙に放出され、冷却される現象。開発した素材は、太陽光の入熱を防ぐ反射層と、熱ふく射を促進する放熱層の多層構造を持つ。特許も出願中だ。
同社エネルギー技術研究所(大阪市此花区)の敷地内で、同素材を貼り付けた対象物を外に置き、温度測定し検証を重ねてきた。同素材の屋外での耐久性は4年以上を見込む。サンプル品はフィルムが銀色2タイプと白色の3種類、帆布は銀色と白色の2種類ある。素材自体にデザインを施すことも可能。
同素材は夏場での膜建造物やコンテナ・倉庫での温度環境改善、熱中症対策商材などでの用途を想定。2021年度中の製品化を目指す。価格は未定だが、同一面積で使う場合、既存の日射反射率の高い塗料と同等かそれ以下に抑える方針だ。