酸化グラフェンが新型コロナウイルスを不活化、その仕組みを突き止めた!
熊本大学大学院の速水真也教授らは、炭素材料の酸化グラフェンが新型コロナウイルスを不活化させる仕組みを突き止めた。酸化グラフェン材料を分散させた溶液を用いた実験で、新型コロナに対する酸化グラフェンの高い吸着性と抗ウイルス効果を明らかにした。不織布マスクやフィルター、塗布材など抗ウイルス製品の開発につながると期待される。
研究グループは物質の形が見える「透過電子顕微鏡(TEM)」を使い、新型コロナに特徴的なスパイクたんぱく質の存在を確認した。次に酸化グラフェン分散液中の新型コロナをTEMで観察したところ、スパイクたんぱく質が消失した状態の新型コロナが酸化グラフェンに吸着していることを確認した。
新型コロナのたんぱく質の定量的解析では酸化グラフェン分散液の中でスパイクたんぱく質は90%以上、ウイルスのゲノムと複合体を形成するヌクレオカプシドたんぱく質は99%以上分解することが分かった。酸化グラフェンの抗ウイルス活性は、酸化グラフェンが新型コロナを吸着した後、ウイルスたんぱく質を分解しているためだと結論づけた。
抗ウイルス材料の研究でナノメートル(ナノは10億分の1)サイズのシートは高い表面積を持つことなどで注目されている。中でも酸化グラフェンは容易に製造でき、人体への毒性も低い。速水教授は「次の未知のウイルスに対して、酸化グラフェンを有効活用してほしい」としている。
日刊工業新聞2021年10月28日